混乱が予想される米大統領選
米大統領選は投票日まで残り1週間となったが引続き混戦模様であり、複数の州において提起された訴訟により来年まで正式な選挙結果が出ないという事態も想定される。ここで予想される混乱を日程順に挙げてみる。
11月3日(一般選挙当日)…通常は出口調査により各メディアが票読みを行い翌日までに当確予想を発表するが、今回は郵便票が多いため出口調査だけでは当確が出ない可能性が高い。郵便票の開票は既に到着順に開票している州もあれば、当日まで開票を行わない州もある。また当日に開票を開始する場合でも、投票日当日の3日消印までを有効とする州もあれば、遅延を受け付ける州もあり、開票結果が判明するまで1週間以上かかる事態も想定される。
スイングステート(激戦州)で僅差となった場合は、2000年の大統領選におけるフロリダ州と同様に再集計の是非を連邦最高裁まで争うケースも想定され、その場合は12月14日の選挙人投票日に間に合わない可能性が出てくる。仮に州として正式な選挙結果を確定できないということは州の選挙人が決まらないことを意味し、この場合法律では州議会が選挙人を直接指名することが可能なため、2000年のフロリダ州では多数派だった共和党が独自の選挙人を任命した。今回も州議会の多数派が正式な選挙結果とは異なる選挙人を任命する事態も起こり得る。
12月14日(選挙人投票日)…無事選挙人が決定しても、2016年の民主党陣営のように選挙人に造反者が出ることもある。また選挙人選出に関して訴訟が提起されるなどの理由で選挙人を決定できない場合、いずれの候補も選挙人票が過半数に届かず、結果的に勝者が不在となる可能性もある。
1月6日(選挙人票集計)…選挙人投票による大統領選において勝者が決定できない場合、新しく選出された議会下院が大統領を、議会上院が副大統領を選ぶことになる。実際1800年の選挙ではこの仕組みに則り下院においてジェファーソンが選出され大統領に就任した。
1月20日(新大統領就任日)…下院において大統領を選出できなかった場合、上院により選出された副大統領が大統領代行となる。仮に上院が副大統領を選べていなかった場合は、現下院議長(ナンシー・ペロシ氏)が大統領代行を務めることになる。
訴訟合戦はすでに始まっており、トランプ大統領による郵便投票不備の訴えによりペンシルバニア州の投票が一部無効になるなどの影響がでている。これはトランプ氏支持者のうち郵便を選ぶと答えた割合が20%以下にとどまるのに対し、バイデン氏支持者の約半数が郵便を選ぶと答えたため、郵便票を無効化できればトランプ氏有利になるためと推測される。さらにトランプ氏が最高裁判事に指名したエイミー・バレット氏の選挙前の議会承認にこだわるのも、選挙結果が連邦最高裁まで上訴された場合に備えてと見る向きが多い。これらの混乱を避けるためには、どちらかの候補が圧倒的多数で当選する必要があるが、現在の状況は残念ながら混戦模様で上述のようなカオス状態へと突入するリスクが高い。市場は不透明なことを嫌う傾向があるため、新大統領が決まらない場合、米国株は来年初までじり安の展開となる可能性が高い。
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