VIXとSKEW

足元の米国株価に関して高値警戒感が広がる。新聞紙面においてもVIX指数やSKEW指数の動きから市場は警戒モードに入っているとする記事を目にすることが多い。そこでこのVIXやSKEWがどういう指数なのかを調べてみた。

まずVIX指数は、シカゴボードオプション取引所(CBOE)で取引されるボラティリティ・インデックスで、原資産S&P500の30日間インプライドボラティリティ(IV)から算出される。図1はVIX指数とS&P500の値動きを示したものだが、S&P500下落時の変動幅拡大に相前後してVIX指数が上昇している。オプションの買い手は価格変動に伴うデルタヘッジによる利益を狙うため、高めのプレミアムであってもオプションを買うことになり、IVつまりVIXは上昇する。またS&P500を保有する投資家が価格下落時の保険としてPUTオプション(売る権利)を購入するケースでもVIXは上昇する。また株価上昇時にVIXは低下し、株価下落時に上昇する傾向があるが、これは一般的な投資家は株式買持ちなので価格上昇時は落着いて投資を続ける一方、下落時には往々にしてパニックに陥り易いからと考えられる。そのため価格下落(PUT)サイドのオプションの方が上昇サイド(CALL)よりIVが高めに取引される傾向がある。

次にSKEWは、CBOEで取引されるS&P500のIV分布の歪度(CALLの割高さ)を計算した上で、「100-10×歪度」で定義したもので、左右対称な分布ではSKEWは100となる一方、PUTサイドが割高な分布では100 を上回る。図1のSKEW指数は恒常的に100を上回っているが、株価が急落すると次の株価反発への備えからCALLが買われ易くなるためSKEWは低下する傾向があることがわかる。図2は足元のS&P500の1ヶ月物オプションの行使価格毎のIVだが、PUTサイドのIVがCALLサイドに対し割高に取引されている。このIVの数字を用いてSKEWを計算すると100を超えるが、市場でPUTサイドのオプションがさらに買われるとSKEWが大きく上昇する。

ところでIVが高いとオプションプレミアムも高くなるので、オプションの買い手はプレミアムの時間的価値の減価分に見合う収益を上げるだけでも苦労することになる。つまりオプションを購入するならIVの低いCALLサイドの方がお得となる。一方、過去を振り返ると株式市場の急落は多くの場合投資家が安心している状態で突然起こっている。つまり株式急落前のIVは低いことが多い。そのためPUTサイドの買い手は、できるだけIVが低いタイミングで、かつプレミアムの安い短期間のオプションを株式急落の直前に購入したいと考えている。したがってVIXやSKEWの上昇は短期物のオプションに集中することが多く、長期オプションのIVにはあまり反映されない傾向がある。

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