自民総裁選 その2

菅首相が自民党総裁選で不出馬を表明したことで、事実上日本の次期首相を決定することになりそうな総裁選の行方が注目される。株式市場では次期政権による経済政策を先取りし、日経平均株価は31年ぶりの高値まで上昇したが、ここで総裁選後に想定される市場の反応を各候補の政策を考慮に入れながら占ってみよう。

表1.各候補の政策と予想される市場の反応

岸田前政調会長 高市前総務相 河野規制改革相 野田幹事長代行

株式 30兆円の経済対策、デジタル田園都市構想、令和版所得倍増、金融所得税引上げ

⇒ 横這い

ポジティブ銘柄:

インフラ、ハイテク 公共投資を10年で100兆円規模、原発推進、防衛費拡充、金融所得税引上げ

⇒ 株安

ポジティブ銘柄:

インフラ、防衛 規制改革、医療・教育等のオンライン化、脱炭素化と年金改革、厚生労働省の分割

⇒ 株高

ポジティブ銘柄:デジタル、医療、金融 女性の社会進出、対中国穏健派、インフレ目標設定に否定的で財政再建派

⇒ 横這い

ポジティブ銘柄:育児教育、中国関連、金融

為替 量的緩和は限界だが、当面は政策現状維持

⇒ 横這い 2%物価目標達成までPB黒字化棚上げ

⇒ 円安 PBはコロナ後に議論、緩和出口論早まる

⇒ 円高 アベノミクスは終了、異次元緩和に懐疑的

⇒ 円高

金利 マイナス金利の深堀りに反対、当面はPBより経済再建を優先

⇒ 緩やかな金利上昇 2%物価目標達成まで緩和継続とリフレ策推進

⇒ 金利低下 基本日銀に任せるが、2%物価目標達成は無理、緩和出口論早まる⇒ 金利上昇 物価目標解除により緩和出口論早まる

⇒ 金利上昇

基本的には、金融税引上げは株価のマイナス要因。また、菅内閣による補正予算や欧米の追加経済対策でも今春以降株価が上昇しなかったことで、インフラ投資政策による日本株引上げ効果は限定的とする。金利に関しては、以前当欄にて相関関係を検証したが、現下の日本においてマイナス金利を深堀りしても一般の貸出金利は下がらない一方、預金者と金融関連企業の収益が低下するとして、金利上昇を株価上昇要因とした。脱炭素化は各候補ほぼ共通しているため、株式を業種別にみるとCO2排出関連業種には厳しい状況が続きそうだ。

さて、菅内閣のどこが国民に不人気だったかを振り返ってみると、世論調査による内閣不支持の理由には「指導力がない」、「政策に期待できない」、「首相が信頼できない」などが並ぶ。不支持はコロナ感染者の増加とともに増えたが、具体的には、欧米に遅れたワクチン接種、迷走した五輪開催決定と度重なる緊急事態宣言、医療崩壊を防げなかった病院に対する指導力不足などがあったようだ。逆に言えば、次期政権に最も期待されるのはコロナ対策やそれに伴う医療改革であり、何れも厚生労働省担当エリアと言えそうで、ワクチン担当大臣を兼ね、厚生労働省分割に言及する河野氏の人気が高いのも頷ける。

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