ここが変だよ日本
1990年代に「ジャパンアズナンバーワン」と称賛された日本経済も最近ではすっかり評価を落とし異質な国扱いとなり、日本株も海外投資家だけでなく国内投資家からも厳しい評価を受け、万年割安となってしまった。そこで新たにスタートする岸田新政権への期待を書き出してみた。
① 物価目標の達成…約20年にわたり物価上昇率はほぼゼロ。原油など世界的資源価格上昇にも人件費などを削り対応してきたため賃金もデフレ。政府はデフレ対策として国債増発による財政支出拡大、加えて日銀はマイナス金利政策や資産買入などの異次元緩和策を採用したが物価は上がらない。ただし足元の物価下落要因は、政府の指導による携帯料金引下げの影響が前年比▲0.5%程度と大きく、政府主導のデフレとの見方もできる。本来はこのような価格統制ではなく、現在大手3社のみに認めている高速通信向けの周波数帯(プラチナバンド)の認可範囲を広げ参入障壁を低くし、価格競争を促すのが民主国家のスタンダードだろう。
② イノベーションの復活…かつてウォークマンやVTRなど世界を席巻する商品を生み出した日本だが、最近は革新的な新商品が無い。電気自動車や平面TV、iモード、スマートフォンなどは、商品開発段階において先行しながらも、マーケティングの巧拙などで結果として米中の後塵を拝している。今年のノーベル賞を受賞した真鍋氏は、日本を離れた理由を「他人の目を気にしすぎる風潮が合わなかった」と語り、縦割り行政や各種規制にも苦しんだようだ。政策的に研究開発分野に資金と自由を与え、役所の規制改革を進めるべきだろう。最近、日本企業への投資がゼロだったソフトバンクのビジョンファンドが、日本のベンチャー企業に投資したことは朗報だ。
③ 財政支出の見直し…リーマンショック、コロナショックと危機のたびに景気対策を繰出し、今や国債残高はGDPの230%、にもかかわらずGDPは30年前からほぼ横ばい。足元のプライマリーバランスは約40兆円の赤字で、このままでは国債発行残高は増え続ける。税収約60兆円に対し、社会福祉関連が約40兆円、国債借換費約20兆円、地方交付金約15兆円であり、景気対策に使える予算は本来無い。今後団塊世代の高齢化を控え、医療費など社会福祉関連の削減が急務だ。
④ 政策対応のスピードアップ…今回のコロナ禍で露呈したが、ワクチンの認可が遅れワクチン購入の決断は遅く量も少ない。入国禁止や緊急事態宣言の判断が遅く解除も遅い。未経験の事態なので他国の様子を見ながら判断しているようで、先陣を切って決断する姿勢は見られない。足元では行動規制緩和に向け準備中のワクチン接種データの3%に記録ミスが発覚、早急に社会全体のデジタル化が望まれる。
⑤ 医療制度改革…これも今回のコロナ禍で露呈したが、国の収入の6割を充てる社会福祉施策の中でも医療制度の機能不全が目立つ。国民一人当たり病床数は先進国で一位にも関わらず、今夏のコロナ感染第5波では病床ひっ迫が発生した。政府は専用病床設置に一床当たり1,950万円の補助金、患者受入態勢が整えば最大1日43万円/床の支給としたにも関わらず、患者の受入れを拒否した病院もあったようだ。さらにワクチン接種や診療を担う医師数の確保のために医療報酬を大幅アップしたが、開業医の平均年収は2千万円超とも言われ、報酬額の引上げが解決策ではないはずだ。
さて、取り上げた課題のいくつかは、人々の気持ちをバブル期の1980年代に戻せばある程度解決できるように思えるのは、同時代を生きた筆者だけだろうか。同世代の岸田新首相の改革に期待したい。
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