日本の消費者物価指数

世界中で物価が大幅に上昇する中、日本の消費者物価指数(CPI)は足元1月で前年比0.5%と米の同7.5%やユーロ圏5.1%と比較して圧倒的に低く、別世界観すら漂う。ただし内容を見てみると、統計のゆがみなどの特殊要因も多く、日本にも静かに物価上昇の波が押し寄せていることがわかる。

項目別に見ると、寄与度が0.85%と大きい①光熱・水道は、電気代(0.51%)、ガス代(0.19%)などエネルギー価格上昇の影響が見て取れる。次はマイナス寄与度が▲1.12%大きい②交通・通信は、自動車(0.37%)、ガソリン(0. 40%)に対し、携帯電話(▲1.47%)と強弱入り乱れる。そして寄与度0.06%の③娯楽のだが、これは12月の0.35%からの大幅低下(▲0.29%)により、1月CPIを引下げた真犯人だが、2020年8~12月に実施されたGoToトラベルという特殊要因の影響による。

さてここで、特殊要因の背景を見てみる。娯楽の低下は前年2021年1月のGoToトラベル停止により旅費等が上昇した反動であり一時的なもの。また携帯電話の低下は昨年3月に政府主導で通話料金引下げが実施されたためであり4月以降剥落することは自明、4月以降のCPIを1.47%引上げることになる。自動車の上昇は半導体の供給制約に起因しているため、コロナ禍からの経済正常化とともに徐々に沈静化が見込まれる。以上から、予測が難しい変動要因は電気、ガス、ガソリン価格を左右する原油を含むエネルギー価格と為替となる。

図1は円建ての原油価格推移とCPIおよびCPI中のエネルギー価格推移だが、やはり円建て原油価格上昇とともにエネルギー価格も上昇している。円建て原油価格は1月に前年比+73%だったが、今後価格が動かなくても2月には前年比で+89%、3月+76%、4月+64%と推移する見込み。但し、図を見て分かるようにエネルギー価格への反映にはタイムラグが2~3ヶ月あり、ピークは4月頃になると予想される。この結果、携帯電話の影響を合わせると、4月に一時的にCPIが2%超となるかもしれない。以前の日本では原材料価格の上昇を賃金引下げ等のコスト削減で吸収することでCPIの上昇を抑えてきたが、足元では政府方針もあり賃金レベルは引上げ基調にあり、予想以上にCPIが上昇する可能性がある。一方で、仮に原油価格がさらに上昇すると、政府はガソリン補助金を1リットル当たり5円から25円に引き上げる可能性もあり、その場合はCPI下落要因となるなどCPIの予想は難易度を増している。  

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