株価下落要因が目白押し
足元で世界経済を揺るがすような事象が相次いで起こっている。まず①2020年初から続く新型コロナ感染によるおよそ100年ぶりのパンデミック発生、②米国では40年来の高水準となる世界的なインフレ進行、そして③第3次世界大戦にも繋がりかねないロシアによるウクライナ侵攻である。当然のことながら将来の経済状況を織り込むとされる株価は、事象発生に合わせて下落に転じ、現状はこれらの悪材料が互いに複雑に絡み合い出口が見えない状況にある。そこで単純化して、要因毎に現況と株価への影響を見てみよう。
①パンデミック…足元では中国や韓国で感染が再拡大、一部都市のロックダウンも再開したものの、欧米ではオミクロン株の重症化リスクは低く、感染ピークも過ぎたとして行動制限を解除する方向で経済は正常に戻りつつある。オミクロン株の致死率は0.3%を下回りインフルエンザ(0.1%)に近く、ほぼエンデミック状態(地域的流行)と言える。ちなみに100年前のスペイン風邪は3年でエンデミック化した。日本や中国など行動制限を続ける国では経済正常化は遅れるものの、世界的にはコロナ禍は収束に向かっており、行動制限を解除した国から順に株価は回復する。
②インフレ…米国では足元のインフレ率が前年比7.9%と40年ぶりの高水準となり消費活動が急減速、世界経済の失速も警戒される。一方で市場は2年前まで世界的なデフレと金利消滅を警戒していたわけで、現状は異常事態であるゼロ或いはマイナス金利から漸く脱出しつつあるに過ぎない。米国のインフレは労働需給のひっ迫によるデマンドプルの比率も高く、コストプッシュ型の場合に生じるスタグフレーションリスクは限定的だろう。少なくとも政策金利が各国潜在成長率を大きく下回っている現状では、多少の金利上昇は金融業界へのプラス効果も大きいと考えられ、特に潜在成長率の高い欧米株への悪影響は限られる。因みに過去の米国利上げ局面では、2回目までは株価は上昇した。
③ウクライナ情勢…市場では、ウクライナ侵攻は2014年のクリミア併合時と同じく短期間での完遂を想定していたと思われる。現状は予想外の展開だが、ロシアに対する西側からの軍事行動は無く第3次大戦には至らないだろう。今後、ウクライナ情勢が膠着することで、経済制裁の長期化によるロシアの疲弊が深刻化する可能性が高い。仮にロシアが経済制裁を中国からの支援で凌ぎ、最終的にウクライナが降伏する可能性もあるが、この場合でも経済制裁は継続しロシアの衰退は変わらない。そしてロシアが全面的に非を認め経済制裁が緩和されたとしても、侵攻に対する賠償と信用失墜によりロシア経済の長期的衰退は避けられないだろう。一方で中国は、ロシアへの支援を通じた権益拡大が予想され、今後の世界経済はウクライナ侵攻による悪影響が限定的な米国と中国中心の回復が想定される。欧州、日本は改めて地政学リスクとエネルギーの対外依存度の高さが再認識され停滞リスクが高まりそうだが、NATOの枠組みが再構築されエネルギー問題にも目途がつけば、潜在成長率の高さから欧州経済の回復は期待できよう。
以上をまとめると、投資対象としては、資源と基軸通貨米ドルを持ちリスク耐性が強い米国株、続いて漁夫の利が期待できる中国株、続いて地政学リスクは高いものの潜在成長率の高い欧州株となり、各種リスクは小さいものの低成長が続く日本株の魅力は劣後しそう。ここは新しい資本主義を掲げる岸田政権による前向きな展開を期待したい。
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