日本経済成長の種
1990年代から2010年代までは世界中どこに行っても多くの日本車が走っており、デザインだけでなくHV(ハイブリッド車)など技術面でも他国勢を一歩リードしていた感があった。ところが最近はEV(電気自動車)戦略の出遅れもあり日本車のプレゼンスは低下基調、このままでは日本経済の屋台骨を支える自動車産業が衰退し、次の担い手がいないまま日本経済全体が沈んで行く可能性もある。ここでは今後の日本経済成長の「種(たね)」となりそうな産業、或いは技術、商品を考えてみる。
・自動車…日本の製造業における4番バッター。但しEVは充電時間が長く航続距離が短いことから、国内メーカーはEVをつなぎ商品と位置づけ、本命はFCV(燃料電池車)と想定し既に市販車も投入済み。今後読み筋通りFCVが主流となれば、再び世界の自動車市場を席巻する可能性がある。また出遅れたEVにおいても日本勢は当初先頭ランナーだった名残から、充電時間と航続距離を飛躍的に改善できる固体電池開発のトップ集団にいる。今後、上手くビジネス展開が出来れば勝機はありそうだ。
・次世代エネルギー…曲がる太陽電池「ペロブスカイト型」は日本人が発明。髪の毛より薄く発電効率も高いことから、ビルの壁面や一般家屋の屋根への転用が期待される。但し海外特許を取得しなかったため、量産体制などで中国に先行を許しており、半導体や平面TVと同じ顛末を辿るリスクはある。地熱発電の技術開発も他国に先行しており、発電機器シェアは世界の7割程度を占める。さらに日本は世界第3位の地熱資源大国でもあるが、国内の開発規制が厳しいため海外での市場開拓が必要だ。また夢のエネルギーとされる核融合においては、本命の磁場方式では欧米に後れを取るものの、日本独自のレーザー方式でブレークスルーを目指す。実用化できれば、宇宙に無限に存在する水素を原料として太陽と同じ核融合反応により、ほぼ無限のエネルギーを得られる。長年にわたる日本の弱点である化石燃料問題からの解放も視野に入る。
・AI(人工知能)…今話題のチャットGPTもGPU(画像処理半導体)も米国が先頭ランナーであり、日本企業が主導権を握るのは難しそうだ。但しAIは停滞する日本経済を再び成長軌道へと戻す原動力とはなり得る。AIは英語が苦手な日本人の言語の壁を引下げ、また日本の特徴ともいえる書類作成等オフィスワークの省力化から労働生産性の向上も期待できる。さらに税金の5割をつぎ込む社会福祉関連ビジネス(例:レントゲンによる症例解析、新薬開発)の効率化により、税金の成長分野への再配分や優秀な理系頭脳の医療関係への偏在解消を通じ、社会全体の労働生産性の上昇も夢ではない。
・量子コンピューター…1990年代に初めて量子ビット(量子情報の単位:量子コンピューティングの理論的基礎)を作ったのは日本人だった。その後量子超越性(既存PCを性能で上回ること)で米企業に先を越され、米中が先頭を走る。現在のノイマン型PCは米国で開発されたが、日本は得意の小型化技術を駆使して一時的だがノートPCとメモリーで世界を席巻した。次世代の量子PCは巨大設備を必要とするが、今後一般向けの小型化・実用化段階では日本勢が再び台頭する可能性があろう。
・飲食と旅行…以前当欄で取り上げたが、日本はミシュランガイドの星付きレストランで最多を誇る美食大国。またコロナ禍における旅行会社によるアンケートでは、コロナ後に行きたい国ランキングで日本は第1位だった。さらに足元では円安が進行しており外国人から見た国内物価は安く、将来的に見ても飲食や旅行などインバウンド関連ビジネスの成長が見込めよう。
思いつくままに並べてみたが、近い将来、上記の中のいくつか、或いは思いも付かない「種」が登場し、改めて日本経済を力強い成長過程へと導いてくれることを期待したい。
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