日銀政策決定会合を終えて

10月末の日銀政策決定会合では、現状のマイナス金利政策を継続とした一方、消費者物価(CPI)の見通しを引上げるとともにイールドカーブコントロール(YCC)政策を微修正した。YCC政策に関しては、円滑に長期金利が形成されるよう柔軟性を高めるため、上限の目途を1%とした上で、上限を超えることも一定程度容認するとした。この決定を受け、直前まで0.8%台で取引されていた10年金利は一気に1%近辺まで上昇、株式は金利上昇を材料に金融株中心に買われ、一方で為替は緩和継続を受け円安が進行した。ここで今後のCPI推移と金融政策の行方、それを受けた金融市場の動向を考えてみる。

消費者物価(CPI)…政府の補助金政策の影響が小さいコアコアCPIは、一般的に賃金上昇率との相関が高く足元は前年比4.2%。今年は春闘を経て3.58%と高めの賃上げとなったが、来年は今年以上の賃上げを目指しており上振れの可能性がある。一方で総合CPIは補助金政策の影響が大きく、例えば9月のCPI前年比3.0%のうち補助金政策の寄与は▲1.1%に及ぶ。仮にこの効果を持続させるためには、毎年補助金を倍増させる必要がある。その仕組みは

図1の通り、①今年2月から補助金によりCPI指数とその前年比は低下、②来年2月以降は補助金効果でCPI指数は引続き横這いだが、前年比は下振れ要因がなくなり上昇、③来年4月に補助金停止となるとCPI指数は上昇、前年比はさらに上昇し、予想では4%を超える。

金融政策…YCC政策はほぼ形骸化し、今後は異次元緩和策の解除に伴う平常状態への移行が予想される。具体的には政策金利のマイナス金利からゼロあるいはプラス金利への引上げ。加えてETF、Reitや国債を対象とした買いオペ終了と保有額の減額などが考えられる。まずマイナス金利政策を見ると、現在日銀は当座預金を基礎残高、マクロ加算残高、政策金利残高に分け、それぞれ0.1%、0%、  ▲0.1%を付利する。ここでマイナス金利を適用する政策金利残高は5兆円程度、当座預金全体540兆円に占める割合は少ない。つまりマイナス金利政策の見直しが実態経済に及ぼす影響は小さく、マイナス金利早期撤廃の可能性は高い。そもそもマイナス金利を一般預金者に適用することは難しく、量的緩和によりマネタリーベースを増加させることで貸出促進を狙った政策だが、その効果を疑問視する向きは多い。ETF、Reit買いオペは既に買入額の減額に動いており、日銀保有分に関しても評価益を計上できる状態にあり、市場を壊さない程度にゆっくりと売却すればよい。大量に保有する国債に関しても、欧米のように償還分のロールを停止することで「ペンキが乾くように」減額できる。

金融市場…利上げ観測から金利は上昇するが、欧米の動きを見ると超長期金利ゾーンが平坦となるイールドカーブの形状が長期金利の終着点となっており、現状日本は凡そ10年で2%程度が目途。株式では銀行など金利上昇で潤う業種の上昇が見込まれ、為替(米ドル円)は実質金利差4.7%(※)の今後の推移が重要だ。来年は日本のCPIが補助金停止から約1.1%の上昇、一方で米国はインフレ鎮静化で約1.5%の低下が見込まれ、実質金利が7.3%まで上昇する可能性もあり当面円安継続が見込まれる。   

※4.7%=米国1.6%(=政策金利5.3%-CPI3.7%)-日本▲3.1%(=政策金利▲0.1%-CPI3%) 

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