ロボット犬戦争が始まる
中国軍がカンボジアとの合同軍事演習にロボット犬を導入したことが明らかになった。背中に取り付けたライフル銃で敵を攻撃するほか、偵察活動を行うなどの訓練を実施したらしい。
中国軍のロボット犬のベースとなっているのは2010年代に米国のボストン・ダイナミクス(BD)社が開発した四足歩行ロボット「Spot」と思われる。同社は1992年創業のロボット製造企業であり、米国防総省高等研究計画局(DARPA)の支援を受けて宙返りまでする歩行ロボットの開発に成功、2017年に日本のソフトバンク社が同社を買収した。当時のソフトバンク社は未来の産業としてロボット事業に注力、車輪で移動する人型ロボット「ペッパー」を開発したが、BD社の技術を活用して歩行を可能にしたかったのだろう。その後ソフトバンクのロボット事業への熱意は薄れ「ペッパー」の開発は終了、BD社株の8割を韓国の現代グループに売却した(売却額は1000億円とされる)。足元では現代グループが開発したロボット犬は、各種製造工場における組み立て作業のチェック等に利用されているようだ。また中国のユニツリー・ロボティクス社は大型ロボット犬「Go1」を開発、2022年に一般消費者向けに約37万円で販売を開始した。一方でロシアのオンラインメディア「マザーボード」は、機関銃を搭載したロボット犬「スカイネット」の動画を紹介。さらにロシア国営通信社「RIAノーボスチ」が掲載した動画には、背中にロケットを搭載したロボット犬が伏せたり立ち上がったり振り返ったりする場面が登場する。因みに海外メディアは、このロシア製ロボット犬は中国製ロボット犬「Go1」を改造したものに見えると報じた。
ところでウクライナ紛争では既にドローンが空中戦の主戦力になっているが、近い将来、ロボット犬の戦闘能力が人間を上回り、地上戦ではロボット犬部隊同士の戦いが中心になるかもしれない。また現在は人間がリモコンでロボット犬を操作するスタイルだが、更なる技術革新が進めばAIがロボット犬部隊を効率的に指揮命令する時代がやってくるだろう。このような状況下、各国政府は国の存亡をかけてロボット犬開発にしのぎを削ることになるが、結果的に自国のAI関連および防衛産業が潤うことにもなる。
このような流れはまさにSF映画さながらだが、未来の戦闘風景は映画「スターウォーズ」のドロイド同士の戦いのようなイメージだろうか。その後のストーリーとしては、映画「アイロボット」のように自我に目覚めたロボット犬が出現して人類に反旗を翻し、「ターミネーター」のように戦略AIシステム「スカイネット」が人類を一掃、残った人類は「マトリックス」のようにカプセルの中で幻想の世界を生きる、が想定される。このような展開はできれば避けたいものだ。
ところでシンギュラリティー(AIの知性が人間を上回る技術的特異点)については様々な意見がある。ここまで見てきたように、AIの活用により少なくとも戦争が人間同士の殺し合いからロボット犬同士の戦いに移行できるとなれば、大量殺戮を避けられるという意味で良い変化と受け止めることもできるだろう。
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