バフェット氏の教示
W.バフェット氏と言えば50年で資産を7,000倍にした投資の神様、オマハの賢人として有名である。彼が率いる投資会社バークシャー・ハサウェイは、SEC(米証券取引委員会)への報告(フォーム13)で昨年12月末時点の上場株ポートフォリオを開示した。それによると、所有する株式2,987億ドルに対し現金は3,252億ドルとポートフォリオの過半を占め、過去最高を更新、1年前に比べてほぼ倍増した。この驚愕の現金残高は、世界の上場企業上位30番目の時価総額に相当する。バフェット氏は「良い球しかバットを振らない」と言っており、米株はやや割高と判断したようだ。足元で調整局面にある米株動向を見ると、バフェット氏の慧眼には感服する。振り返れば、2000年のドットコムバブルの時も、バフェット氏はハイテクはよくわからないとして急騰するドットコム銘柄を保有せず現金ポジションを高めた。当時、多くの市場参加者が「バフェットは時代遅れの終わった投資家だ」と陰口を叩いたが、結果はドットコムバブルが崩壊、バブルに踊った投機家たちはこの世界から去って行った。足元のバフェット氏の動きは25年ぶりの市場へのウォーニングだったわけだが、今回も追随しなかった投資家は今のところ辛酸をなめている。
ここでバフェット氏に追随しない理由をいくつか考えてみると、
① 自分はバフェット氏よりも運用が上手いと思っている
② 株式売却に伴い損失が生じる、或いは利益が最大時点から減ることは避けたい
③ 保有するのは気に入った銘柄、或いは長期投資目的の銘柄なので売却は考えていない
などが挙げられよう。
理論的に①が正しい確率は低いものの、実は一番多いかもしれない。市場でもよく見られる現象で、例えば、米国の経済と金融政策に関してFOMC参加メンバー以上に精通した人材は極めて限られるにもかかわらず、市場はFFレート予想(ドットチャート:現状、年内利下げ予想回数2回)に逆らって取引を続ける。この結果、FFレート先物は、年内利下げ回数の織り込みを1回(年初)から3回(現在)へと増やすなど、振れ幅は拡大する。②は初心者によくみられる投資行動。損失確定に加え利食い売りすら出来なくなり、ポジション調整が後手に回る。③は投資戦略としては、正しい考え方だと思う。
今後、バフェット氏がいつ米株を買い戻し始めるかが注目されるが、一方で日本の投資家にとっては彼が商社株を保有継続していることは心強い。背景には、バフェット氏の投資手法であるグレアム式バリュー投資、割安株を長期保有する戦略があるのかもしれない。因みに、PERを比較してみると、年初でS&P500が20倍半ば、ナスダックが30倍超と割高だったのに対し、TOPIXは15倍割れと割安であり、日本株を積極的に売る環境ではないということか。
さて、バフェット氏による25年ぶりのウォーニングは、バークシャー・ハサウェイ副会長で盟友だったC.マンガー氏(享年99歳)を亡くしたにも関わらず、今回も的中となりそうだ。これからも参考にしたいところだが、将来的に見ると、現在94歳のバフェット氏による次回ウォーニングは期待できない可能性もある。因みに、バフェット氏は一般投資家に対しては、アクティブ運用よりインデックス投資を推奨しているが、まずは、バフェット氏に代わる次なる人材(賢人)を見つけることが大切だろう。
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