参院選を受けた日本株動向
自公連立政権は、参院選(定数248、今回改選125)で改選前の66議席から47議席に減少し、過半数維持に必要な50議席に3議席届かなかった。しかし、野党第1党の立憲も22議席(非改選と合わせ37)と改選前から横ばいとなり、勝利にはほど遠く、解散総選挙に持ち込んだ場合も議席数を増やせるかは微妙な結果だ。与党から離れた批判票を取込めなかったとして党内では野田党首の責任を問う声もある。
今回の選挙での勝者は参政党(14)と国民民主党(17)である。参政は排外的な政策を前面に出し、国民は勤労世代への所得支援強化を押し出した。どちらも、これまで政治への関心が低かった30代、40代の若い世代から好意的に受け容れられた。参政人気は欧米の極右台頭の流れが遅ればせながら日本に上陸した形で、今後も勢力拡大が予想されるものの政権運営能力があるわけではない。一方の国民は17議席と立憲に迫る勢いだったことから、与党と立憲の間でキャスティングボードを握る状況、つまり安易に野党連合には加わらないと思われ、不信任決議案提出権利のある立憲も単独では何もできない。自民は、懸念されていたほどの大幅な議席減ではなかったこともあり、石破首相は比較第1党党首として首相続投を表明したが、衆院選、都議選に続く3連敗で、自民内部にも石破おろしの動きが広がる。足元では、米国との貿易協議の一旦合意を受け、石破首相がポイントを挙げた形となり、政局はいよいよ混迷する。ここで今後の展開を予想してみよう。
<石破続投>与党は衆参両院で過半数を持たないため、野党の協力がなければ議案の成立は困難となる。政府は通常、補正予算を通過させるため10月頃に臨時国会を開催するので、石破首相はおそらく10月までに新たな連立相手を3つの野党(立憲、国民、維新)から見つけようとするだろう。しかし、少なくとも現段階では、これら3党(および参政)は自民との連立に加わる意思がないことを表明している。
<石破辞任>後任候補は高市、林、小泉、小林といったところか。林、小泉、小林であれば現政権の政策継承が概ね予想される。一方、高市の場合は日頃の発言から利下げと消費税減税を目指す可能性がある。この政策は急激な円安リスクを伴い、高インフレ+実質低成長社会突入(新興国型)リスクがある。
<野党の閣外協力>石破続投でも辞任でも自公が少数与党であれば、国会で議案を通すため、野党との部分連合や閣外協力を模索することになる。現状とほぼ同じだが、政局混迷は長引きそうだ。
<野党連合>参院過半数125議席に対し自公は122議席を占めるので、ほぼ全野党がまとまる必要がある。ただし野党の公約で共通するのは消費税減税くらいで、その他は右から左まで様々。連合は難しい。
以上より、立憲が不信任案を提出し成立させない限り、自公の与党継続+野党との閣外協力となる可能性が高い。現状と大きな変化はないが、参院においても自公が少数与党となったことで、今後は議案成立のハードルは上がろう。ただし、ほぼ全政党が弱者救済型の現金給付、あるいは減税を掲げる一方、日本経済の成長戦略はあまり見当たらない。そして財源は主に国債増発か大企業増税である。つまり対米関税交渉がひと段落した現状、政治の停滞は企業活動に障害というより追い風となる。難航が予想される補正予算も、本来はコロナ禍等想定外の災禍に対する緊急予算であり、現状のようにズルズルと続けるものではない。必要最低限の行政機能が維持される限り、政治の停滞はむしろ日本経済にとって「良薬」となる可能性も否定できず、足元の日本株は堅調。同様の状況は昨年の独でも見られ、GDPのゼロ成長と政局混迷に加え、米トランプ政権誕生や中国景気減速にも拘らず独株は続伸し最高値を更新した。日本株も同様に早晩の最高値更新から長期上昇局面入りの可能性がある。
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