Aiは電気羊の夢を見るか

アルバニアでは、汚職対策のために「AI閣僚」という架空の人物が任命された。汚職の誘惑に無縁で、公平かつ透明性を持ち、24時間休むことなく働ける頭脳として大きな期待を集めている。最近のAIの進歩は目覚ましく、筆者が担当するアナリスト業務に関しても、1世代前のChatGPT4では間違いが多く信頼性が今一つだったものが、最新のGPT5ではほぼ問題のないレベルに達している印象だ。言い換えれば、筆者の業務はAIに奪われつつあるということである。ただし、日経新聞の調査によれば「わが社のAI活用は進んでいる」と感じる日本企業の従業員はわずか14.4%にとどまる。多くの職場では依然としてAI導入が遅れており、まだまだ大半のサラリーマンは安泰なようだ。一方、遅れていると感じる割合は34.1%。そしてAI活用が遅れていると感じる企業では、経営者自身がAIを活用していない実態も明らかになった。具体的にはAI活用が進んでいるとした回答者の46%が「経営者がAIを使いこなしている」と答えた一方で、遅れているという回答者ではその割合が3.8%にすぎなかった。結局、AI活用を本気で進めるには、経営者自身がまず生成AIを使いこなし、その成果を示すことが不可欠だ。まさに「やってみせないと人は動かじ」である。

AIの先頭ランナーである米国を見ると、経営者が積極的にAIを活用しているテック業界において、すでに入門レベルのホワイトカラーの仕事はAIに置き換わりつつある。そして、その影響で多くの有名大学のコンピューター関連新卒者が雇用環境の悪化に直面している。NY連銀によると、大卒以上の学歴をもつ22~27歳の失業率は5.8%と約4年ぶりの高さだった。これからはテック業界だけでなく、幅広い企業においてAI活用で効率が高まり、今後数年間で管理部門の従業員数も減少する見通しだ。つまり若手だけでなく、ホワイトカラー全体がAIにより雇用危機に見舞われるかもしれない。

全ての仕事がAIにとって代わられそうな勢いだが、再びアナリスト業に目を向けると、一般的な分析業務であればAIの優秀さが際立つものの、トランプ大統領のようなやや突飛な行動や政策に対してはAIは混乱するため、まだ人間のアナリストによる分析の方が的中率は高いようだ。相手が人間の場合、いつも最適な行動を取るわけではないことが分析を難しくする。筆者が以前従事していたトレーディング業に関しては、さらにAIの問題点が際立つ。たとえば、筆者は1990年代に債券先物と株式先物のプログラム取引をスタート。毎年順調に利益が出ていたので、取引担当者を設定した。言わばAIの走りである。しかしプログラムはしばしば「まさか!」というタイミングで売買サインを出すため、担当者がためらいシミュレーション通りの収益が出ないことが度々発生した。これはAIの判断に人間が従えるかという根本的問題を提起しており、優秀なAIでも周囲の人間の判断次第で成果が出ないことを示す。ちなみに先述のプログラム取引は、担当者を相場に先入観のない若手に任せることで問題解決となった。トレーディング業は経済のみならず人間の金銭欲との闘いで、最適解がないことも多い。最終的に、必ず勝つプログラムが開発され、参加者が全員それに従った場合、買う人はいるが売る人はいない、あるいはその逆となるため、ストップ高とストップ安の繰り返しとなり、現実的には取引できない。また、一般的に人間は損失回避バイアスが強く、確率論通りの行動をとらない事があり、まだまだAIが学ぶことは多そうだ。さらに、AIの進展には倫理的課題や電力不足といった現実的制約も立ちはだかる。

SF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』では、アンドロイドの寿命が彼らの増殖を制御する仕組みとされる。では、寿命を持たない現実世界のAIは、今後どのように変貌するのだろう。

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