高市新首相誕生
高市自民党総裁が、女性として初めて内閣総理大臣に選出された。26年間続いた公明党との連立を解消し、維新との連立合意を急ピッチでまとめたほか、NHK党との参院会派結成や参政党への接近など、積極的な多数派工作を展開した結果、衆院では第1回投票で過半数を確保、参院でも決選投票を制した。
連立相手の維新は、公約として①消費税2年間ゼロと勤労所得控除・低所得者向けの給付付き税額控除の導入に加えて、社会保障関連では②2040年度まで年2兆円のペースで増える国民医療費の総額を、逆に年間4兆円削減し、年間6万円手取りを上げる、③人口減で余る11万病床の削減、④75歳以上にも現役世代と同じ原則3割の窓口負担を求める、などを掲げる。自民との連立交渉では、企業・団体献金の禁止、食料品への消費税減税、国会議員の1割削減を主要な交渉条件として提示した。自民党内では議員数削減などに反対意見も根強いが、高市氏は「絶対に首相の座を諦めない」との言葉どおり、十分な調整を経ずに維新案を受け入れた模様だ。また、靖国参拝や米国への80兆円投資見直し、国民への2万円給付など、物議を醸した政策を封印し、「実を捨てて名を取る」現実路線に転じた印象を与える。ただし、維新は当面、閣外協力にとどめる姿勢を示しており、政権関与は旧公明党ほど強固ではない。以下は連立にあたり合意したとされる政策と検討中の課題である。
<具体的な政策(合意文章ベース)>
・ガソリン減税…25年臨時国会で成立を目指す。野党も合意方向で必要財源は1.5兆円。
・高校無償化…10月中に制度確定し26年4月に実施予定。野党も合意方向で必要財源1000億円。
・租税特別措置の見直し…総点検し政策効果の低いものは禁止。
・防衛費増額…根拠となる戦略文章を前倒し改定。前政権案では必要額3兆円に対し不足分は1兆円。
・スパイ防止法制…今年中に検討を始め、速やかに法案提出。
<具体的な政策(検討中)>
・食品消費税ゼロ…2年間に限定することで検討。一度下げると引上げは困難でコストもかかる。
・年収の壁引上げ…所得税の発生する所得を103万から178万円へ引上げ。必要財源7~8兆円。
・コメ増産…精緻な需要予測に基づき生産。維新は1.5倍増産求めるが、鈴木農相はお米券配布案。
・高額療養費の見直し…前政権で成立直前だった。現役世代の保険料抑制のため患者の自己負担増額。
・給付付き税額控除…税控除だが、非課税などの貧困層には減税分を給付する。所有財産の把握必要。
高市氏の所信表明では、公約の責任ある積極財政に加え、社会保障改革、資産運用立国、労働規制緩和などが並ぶ。連立合意案のうち、必要財源が大きいガソリン減税は、租税特別措置の改廃や金融所得課税の強化などを財源とする方針を明記。他の政策は金額が小さく、すでに石破政権で合意済みの内容もあり、補正予算で対応可能とみられる。検討中の課題では、食品消費税減税と年収の壁が焦点だ。とりわけ、国民の支持が低い消費税減税は一律2万円給付と同様に封印される可能性が高い。一方で、名目GDPが成長する通常の社会に戻った以上、年収の壁を引き上げるのは当然の流れである。財源を維新が主張する社会保険関連費用の見直しに求めるなら、日本経済の構造的課題にようやくメスが入ることになる。従来の社会保障改革案で多用される『目指す』や『進める』は大嫌いだ、と公言する吉村代表の突破力に期待したい。金融・財政面では、健全財政派の維新に加え、麻生副総裁が野放図な国債増発を抑制しよう。また、昨年不評を買った「利上げするのはアホ」発言を反省し現状は慎重姿勢だが、日銀への政治的介入が目立てば大幅な円安が進行する可能性があり、今週の日銀会合は注目材料となる。
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