日本国債を購入するなら

日本が金利のある世界へと戻った結果、単利で5%を超える国債も出現し、株式等のリスク資産から国債へ乗り換えても良いとのでは、との声も聞かれる。ここで注意したいのは、債券の利回り表示には単利と複利があることだ。異次元緩和期のゼロ金利環境では両者の違いは小さかったが、昨今のように金利のある世界へ回帰すると、単利と再投資を前提とする複利との乖離は大きくなる。

図1は横軸を償還までの年限、縦軸を単利とした場合の日本国債イールドカーブである。回号の若い順に一筆書きの折れ線グラフとしたが、同じ満期でも単利の差が激しい。例えば、残存30年近辺で、JX89回(償還2055/12/20、クーポン3.4%、複利3.6%)の単利が3.6%であるのに対し、JU9回(償還2056/3/20、クーポン0.4%、複利3.5%)の単利は5.5%と高く、JU9回を購入した方が得に見える。さらに、JU9回より償還の長いJU18回の単利が3.9%であるのに比べてもお買い得が強い。これは単利の式が(償還価格差の年率+クーポン)÷購入単価 とクーポンの再投資や償還金の現在価値等を考慮していないから。そこで、現在価値で比較し易いように用いられるのが複利計算であり、日本国債の複利を図2に示した。ここで、横軸には残存期間ではなくデュレーションを用いている。デュレーションは、平均的に何年で元金を回収できるかを示す数値で、ゼロクーポン債は満期となる一方、クーポンが高ければ満期より短くなり、債券の代表的リスク尺度の一つである。図2を見ると、金利のある世界で40年債の金利が上昇した結果、最近発行の40年債のデュレーションが30年付近から折り返して短くなっていることがわかる。株式では、リスク・リターン特性を収益率とボラティリティーで表すが、債券では複利とデュレーションで表すことが多い。ところで、図2を見るとデュレーション12年あたりで複利利回りは急上昇する。これは、複利が投資期間中を一定で計算されるのに対し、現実には時とともに金利が変化すると予想されることが一因。ここで、デフォルトリスクや銘柄毎の需給を排除したスワップ金利カーブと、国債のキャッシュフローを比較した指標がアセットスワップ(ASW)である。例えば、デュレーション12年のJX72回(複利3.6%、値段51.83円)と、JL188回(複利3.1%、値段79.49円)についてASWを計算すると、複利は異なるもののASWはそれぞれ38.5、38.8とほぼ等しい。つまり市場では、一般的に国債をデュレーションとASWで裁定機会が生じないように値付けしているようだ。ASWカーブは概ね直線的だがデュレーション12年近辺で屈曲しており、ASWで比較すると新発20年債(JL195回、ASW=51)近辺の国債はスワップ対比では割安と判断される。単利や複利とはまた異なる債券投資の尺度だが、これはスワップ市場の予想通りに金利が動いた時の評価であり、実際の収益は予想とは当然異なる事には注意したい。

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