消費税増税
10月1日から消費税が8%→10%へと引上げられた。世界的に景気減速リスクが燻り、欧米中銀が金融緩和を進める中での増税は一部海外メディアに酷評されているが、その内容をチェックしてみる。
あゆみ
日本の国債発行残高が1,100兆円とGDPの200%を超えたが、今後団塊世代の後期高齢化など社会福祉関連費用の増大が予想されるため、安定した新規財源確保が必要として2012年に2段階の消費税上げが決定された。ただし、景気への配慮から2014年、2016年と過去2回延期となり、今回は時限措置を含む手厚い還元策等とのセットで漸く実施にこぎつけたのが実情。
問題点
・消費の落込み…1989年4月(3%)、1997年4月(5%)、2014年4月(8%)と過去に消費税が引上げられたタイミングで消費落込みの影響等でその後景気は減速した。駆込み需要の反動との見方もある。
・逆進性…年収1,000~1,250万円世帯の所得に対する負担割合約3.5%に対し、年収200~300万円世帯は約7%となり、所得に対する税負担が低所得者ほど高くなる。
利点
・安定性…景気動向に左右され易い所得税、法人税と比較すると税収の変動が小さい。
・国際比較…法人税率は既に先進国の中で高め、又所得税は労働意欲の減退に繋がるため増税しづらい。一方、日本の消費税は欧州などの20%超に比べ低く増税余地があるとされる。ちなみに日本の税収内訳は、消費税33%、所得税31%、法人税22%、資産課税14%。
・税捕捉率…所得税、法人税はクロヨン(会社員9割、自営業者6割、農林水産関係従事者4割)と呼ばれ税捕捉率が低いという問題があるが、消費税は物品を購入すれば公平に納税するため捕捉し易い。
対策
以上、問題点と利点を列挙したが、今回は過去の教訓から2.3兆円規模の手厚い対策とセットでの実施とし、5兆円程度と見積もられる増税インパクトを和らげている。 具体的には、
・食品や新聞等の一部税率据え置き
・ポイント還元とプレミアム付き商品券の配布(2020年までの時限措置)
・年金生活者支援給付金および住まい給付金の支給(2021年までの時限措置)
・自動車減税および住宅ローン減税(一部2020年までの時限措置) など。
さらに本来の税金の使い道として、1.7兆円の少子化対策(人づくり革命)と1.1兆円の社会保障の充実、合計2.8兆円の支出が予定されており、2.3兆円の手厚い対策と合わせると合計5.1兆円の財政支出となる。つまり1年目は差引では景気に対してプラス効果が期待できるはずで、悪影響を心配するのは2年目以降。さらにその時の経済状況によって時限措置を延長することで、景気へのインパクトとなるタイミングを政府がコントロールしながら増税できる。
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