先物価格の決まり方
年初、中東情勢の緊迫化を受けて原油価格WTIが$63/バレルまで上昇したが、先物価格を見ると価格が上昇したのは期近物(受渡日が近い)だけで、期先物にはあまり影響がなく$53/バレル近辺で安定していた。市場は米・イラン問題は長引かないと見たようで、実際先物市場の想定通り事態は沈静化した。ここで先物価格の決まり方や期間構造を①原油、②金、③円/米ドル($)、④日経平均について見てみよう。
①原油先物:図1は最近の原油先物の価格変化と期間構造。かつて原油価格の期間構造は貯蔵コストを反映し期先物の方が値段が高い状態(順ザヤを意味するコンタンゴと呼ばれる)と習った記憶があるが、最近では将来的な電気自動車普及を見越した原油需要減と、火力から自然エネルギーへの発電方法シフトやシェールオイルなどへの代替が進み、期近物の方が値段が高いこと(バックワーデーションと呼ばれる)が常態化している。特にシェールオイルは採掘コストが$50以下で、期先物が$55を超えると生産量拡大を目的にリグ稼働数を増やして先物を売る動きが活発化するため、期先物が$55以下で安定すると言われる。
代替ニーズ、装飾品や工業用途等の好需給により期先の値下がりペースは円/$より緩やか。表1で米ドルとの金利差を1.5%とした場合に、$7.57分期先が割高で所謂金プレミアムが観察される。
③円/$:マイナス金利の本邦投資家はプラス金利(年1.5%)の米ドルを保有して金利収入を得たいと考える。つまり仮に108円/$で米ドルを購入し、1年後に同じ108円/$で米ドルを売却予約できたなら、その期間米ドルの金利1.5%が収入として残る。さらに日本の1年物金利は▲0.15%なので、合計の利ザヤは1.65%と計算され、裁定が働き1年先の円/$は金利差1.81円分ドルが安くなる。近年は世界的な米ドル需要のひっ迫から、ベーシススワップ等の需給に基づくプレミアムが加算され(表1で0.37円の円高要因)、期先物円/$価格は金利差以上に円高ドル安となっている。
④日経平均:225社の将来的な業績を反映するように感じるが、実際は配当を米金利と見れば円/$先物と同じ。ただし米金利と円金利が期間毎に確定できるのに対し、将来的な配当を確定しにくいため、配当部分に関し先行きの企業業績に対する思惑が入る余地がある。表1において市場の配当予想1.87%と短期金利▲0.15%より金利差分は481円で、計算値と1年先物の取引価格とほぼ合致する。
以上のように、原油先物は将来の需給予測により動き不確実性が高いが、その他先物は一部で市場需給の予測を反映しているものの、基本的には金利差に基づくため不確実性は低い。
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