新型コロナウィルス
昨年末に中国武漢で発生した新型コロナウィルスに対する警戒感から世界の株価は下落基調。ウィルスによる経済への影響と今後の展開を考えてみる。
まず今回の新型ウィルスに関してだが、当初は野生動物から人へ感染したと見られ遺伝子構造の96%がコウモリのウィルスと一致している。コロナウィルスとしてはSARSとMERSが記憶に新しいが、新型ウィルスの致死率はコウモリが発生源だったSARSに近い。ただしSARSと異なり潜伏期間内でも感染する事例が見られ、最初の発症から1ヶ月で感染者数はすでにSARS禍を上回る(表1参照)。
日本の観光産業へのインパクトに関して、2019年の中国人訪日客数は960万人で全体の3割で団体客はその3割、国内消費額は1.8兆円で観光収入全体の4割を占める。今後中国で団体旅行の禁止が6ヵ月続くと仮定すると、観光収入は3,000億円程度減少し、日本のGDPを0.05%押下げるようだ。
一方、武漢市封鎖など部品工場を中心とした中国のサプライチェーン問題による世界経済全般への悪影響も懸念される。参考事象としては、MERSは感染者数が少なく地域も中東だったので、今回はSARSとなる。2003年のSARS禍による短期的各国GDP押し下げを表2に示した。ここで震源地中国において、新型はSARSとGDPインパクトは同じと仮定し▲1.05%。中国の経済規模は2003年当時から8倍に拡大、世界経済に占めるシェアは当時の4倍。日本以外は中国と同じ割合でGDPが成長していると仮定しインパクトは、中国のシェア増加分となる4倍とした。一方、日本はGDP成長が止まっているためインパクトはGDP増加分である8倍と仮定し▲0.56%と計算され、▲0.05%の観光業へのインパクト以上にサプライチェーンや消費減速等による経済損失が大きいと考えられる。ただし2003年の景気減速にはSARS禍後に勃発した米国によるイラク戦争の影響も含まれている。
中国に関しては、過去のSARS禍と異なり発症後1ヶ月ですでに感染源とウィルス特性がある程度判明していることに加え、近年人間のゲノム編集などに代表される医療技術進歩も著しいため、早期拡散防止と治療方法の確立が期待される。
中国外ではウィルスの潜伏期間を考慮すると渡航制限後2週間経った2月中旬までの感染対策が重要。ちなみにSARS禍で、最初の患者発見から渡航制限まで5ヶ月のラグがあったことに比べ今回の初動は早いものの、感染力が高いため感染拡大を食い止められるかは不明。一方で、米国の今シーズンの旧来型インフルエンザによる死者が8,000人を上回るなど、過度に新型ウィルスを恐れるよりも、まずは正しいウィルス感染予防策*が大切だ。
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