米大統領選と株価

11/3の米大統領選まであと1ヶ月あまりとなったが、米株式市場はさえない展開が続く。足元の支持率を見るとバイデン氏がトランプ氏を6ポイント程度リードしているが、その差はじわじわと縮小しており、勝算は五分五分との見方が広がる。

両候補が掲げる政策を見ると、共にコロナ禍からの脱出に向け1,000万人規模の雇用を生み出すと主張しているが、その処方箋はバイデン氏が企業と富裕層への大増税による環境投資と所得再分配を掲げるのに対し、トランプ氏は企業と中間層への減税第2弾と完全に異なる。因みに税額に関してはバイデン氏の案では10年間で3兆ドル規模の増税となるのに対し、トランプ氏の案は10年間で1期目の1.5兆ドルに加えさらに約1兆ドルを上乗せ計2.5兆ドルの減税であり、その差は5兆ドル超に達する。

経済政策に対する市場の評価は、当初はバイデン氏がグリーンニューディールと称し環境インフラへの2兆ドルの投資に対しトランプ氏は1兆ドルの減税であり、どちらかと言えばバイデン氏勝利の方が米株にとって好ましいとの見方があった。しかし選挙戦が進む中で、バイデン氏は民主党左派の意見を大幅に取入れざるを得なくなり、結果として予算案は10年で5.4兆ドルにまで拡大した一方、当然その財源としての増税額も膨れ上がり、バイデン氏の増税プラン通りならS&P500種企業の1株当たり利益は12%減少するとの試算が出るに至った。これに対し、バイデン氏は増税による景気下押し圧力は財政支出と相殺され、また株高の恩恵は富裕層に集中しているため一般庶民への影響は小さいと反論している。たしかに外国人を除く米家計を見ると、株式と投信の9割弱を所得上位10%が保有しており、直近の株価最高値更新の恩恵は富裕層に集中していたことになるが、米株にとってバイデン氏優勢はどうやら売り材料とみなされつつあるようだ。

日本では消費増税を行うと内閣支持率が低下するが、米国においてもこれだけの増税案を掲げてのバイデン氏の勝利は難しいとの見方もある。仮にバイデン大統領誕生となり、公約通り社会保障関連支出の拡大とそれに伴う中央銀行による国債買入額の増大となれば、まさに経済の日本化とも考えられ、経済成長が中期的に鈍化するリスクが懸念される。

さて過去の大統領選に向けた株価の動きを見ると、今回のように大統領選の年の8月末から投票日までに相場が下落した例は足元までの100年間で6回ある。共和党政権下の1932年、1960年、2008年と、民主党政権下の1952年、2000年、2016年であり、この6例すべてで与党が負けている。その後の株価動向はまちまちだが、長期的に上昇基調の米株推移の中にあって、2000年と2008年はハイテクバブル崩壊とリーマンショックに重なり大幅な下落相場となった。これからのおよそ一カ月間、米大統領選の行方には注目せざるを得ない。

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