バイデン候補の政策
米大統領選はトランプ大統領による第1回TV討論会でのルールを無視した言動に加え、新型コロナ対策や全米規模に拡大した反人種差別デモ対応の不手際などから民主党候補のバイデン新大統領誕生の確率が高まっている。ここでバイデン候補の政策をもう一度確認しておこう。
<税制>
バイデン候補による増税策はトランプ大統領の一部減税策を撤廃し、富裕層への増税7,500億ドル、法人税を21%から28%へ(8,300億ドル)、キャピタルゲイン税を23.8%から43.4%へ引上げなど総額約3兆ドルに達する。
<経済対策>
バイデン候補は“Build Back Better”「より良い復興」をスローガンとする経済政策を発表しているが、その内容は米製造業への投資、環境・インフラ投資、教育・介護、人種平等の4本柱で構成されている。各項目の財政支出はおおよそ表1のようになり合計は11.3兆ドルとなる。
表1.バイデン候補の経済対策 出所 Manhattan Institute
項目 内容 金額
米製造業への投資 米国製EV、IT、医薬品など先端技術分野における政府調達
及び研究開発支援 $7,000億
環境・インフラ投資 近代的で持続可能なインフラとクリーンエネルギーへの投資 $2兆
教育・介護 社会保障および医療保険制度、教育および子育て支援 $4.9兆
人種平等 最低賃金値上げ、住宅支援、追加経済対策($3兆) $3.7兆
上記は既に議会で決定済みの新型コロナに対する追加経済対策3兆ドルを含むため、トランプ大統領の政策との比較ではバイデン候補の経済政策の方が財政支出は8.3兆ドル多いことになる。トランプ大統領が掲げる追加経済対策の減税1兆ドルに比べると、バイデン候補による増税と財政支出との差引約5兆ドルの景気刺激効果は大きく、最近はバイデン候補勝利→株価上昇という構図となりつつある。
なお、恩恵を被ると予想される業界は再生可能エネルギー関連やEVなどであり、一方で警戒されるのはシェールオイルを含む旧来型エネルギー企業および法人税の引上げが収益を圧迫する高収益企業の代表格であるGAFAなどのプラットフォーマーとなる。
一方で差引8.3兆ドルの財源については、仮に全額国債増発で賄われる場合は足元でGDP比131%の米国債務がさらに膨らむと想定され、財政悪化と国債増発により現在0.7%台の米国10年国債金利が1%まで上昇するとの試算もある。
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