個人金融資産と株価

 あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

日本の昨年末の個人金融資産残高は、前年比49兆円増(2.7%増)の1,900兆円となり過去最高を更新した。年間で見た場合、昨年1-3 月の株価急落とその後の上昇に伴う時価変動が生じたものの、資金の純流入が51 兆円あり残高の増加に繋がったようだ。このうち株式、投資信託など有価証券は250兆円で金融資産全体に占める割合は13%にとどまり米国の52%と比較すると極めて小さく、一方で現預金比率は53%と高い。個人の有価証券保有比率の低さは、低金利下ではそのまま個人金融資産の低成長を意味することから、金融庁は「貯蓄から投資へ」と銘打ち証券投資を促進している。

さて、日本人が金融資産として現預金を好む理由としては、①安全志向②株式投資の失敗経験③国民の年金がすでに株価連動となっているなどの理由が挙げられる。たしかに昨年は日本株が上昇したとはいえ、ようやく日経平均が29年前の水準を回復しただけで、TOPIXは2018年の高値をまだ越えていない。つまり足元の株価はバブル期から30年間にわたり投資を継続・我慢してきた投資家がやっと報われたレベルに過ぎず、途中アジア危機、リーマンショックやコロナショックなどで肝を冷やすよりは、安心して保有できる現預金の方が良いとの考え方も理解できる。一方、長期間にわたる日米の株価推移を比較すると別の面も見えてくる。

図1は日米株価の30年間の推移だが、米株のパフォーマンスは日本株を大幅に凌駕しており、有価証券に積極的に投資したくなるのも当然だ。ここで30年前の個人金融資産に対する有価証券の比率を見ると、日米共に約15%と同じ水準だった。つまり日本人

全体では既に持っていた有価証券の保有を継続、新らたな金融資産の増加分に関しても有価証券に15%と既存の割合と同等に配分した結果として現在の保有比率に至ったと見ることができる。一方、米国人全体では30年前は金融資産に占める有価証券は日本人と同比率だったものの、その後の株価上昇により保有有価証券が10倍近く値上がりし、結果的に現在の保有比率に至ったと考えることもできる。つまり、米国人の場合も積極的に貯蓄から投資へ資金移動をした結果ではなく、時価の上昇により受動的な結果として有価証券の割合が増えたとも言えるわけだ。

この考え方に基づくと、日本の個人金融資産に占める有価証券比率を引き上げるために必要なものは、よく言われる投資教育や企業IRの強化に加えて、株価の上昇、言い換えれば過去30年間続いた低成長経済から、脱炭素や6Gなど新技術を基にした高成長へのギアチェンジということになる。

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