コロナ禍の株高はバブルか
現状のコロナ禍の下、経済活動の状況は正常化には程遠いにもかかわらず世界中で株価が上昇しており、一部にはバブルを警戒する声がある。ここで今の株高はバブルなのかを考えてみよう。
まずビスマルク(独の元首相)による「賢者は歴史に学ぶ」との言葉に従い、過去のパンデミックに類する局面での株価の動きを見ると、表1のようになる。
パンデミック 発生年 株価動向
スペイン風邪 1918年 NYダウがその後10年で約4倍
香港風邪 1968年 ハンセン指数がその後6年間で約30倍
SARS 2003年 上海総合指数がその後3年間で約3倍
新型インフルエンザ 2009年 リーマンショックと重なったため観測困難
表1を見ると過去のパンデミック後の株価は3~10年程度で大きく上昇しており、その理由としてはパンデミックが人々の予想より早く収束したのに対し、財政出動などによる景気浮揚効果はその後数年にわたり継続したことが挙げられる。恐らく足元の株高も過去のパンデミック後と同様の思惑により形成されていると考えられる。これまでにコロナ対策として世界で14兆ドルと世界の総GDP(93兆ドル)に対して約15%に達する大規模な景気対策の実施が既に決まっている。株価はGDPの動きに連動するとすれば、今後新型コロナが収束に向かい正常な経済状態に戻る段階では、世界の株価がコロナ禍前の1.15倍になる計算になる。国別の景気対策を見てみると、米国はバイデン政権が検討中の1.9兆ドルを加えると総額6兆ドルとGDPの30%と最大、続いて日本の2兆ドル(GDPの40%)、ドイツの1.5兆ドル(同40%)、中国0.9兆ドル(同7%)の順となる。ここでこれらの景気対策の効果を反映した各国の株価水準を推定(具体的には、これらの対GDP比に各国の潜在成長率を加えコロナ禍前の2019年9月の株価インデックスに乗じることで算出)したのが表2。
これを見ると日米の株価は景気対策を考慮すると妥当なレベルまで上昇しているものの、バブルと言えるほどではないようだ。ドイツの株価は景気対策を織込んだ数値に対し0.8倍の水準に留まっており、今後EUによる景気対策が加わることを考慮すると割安とも言える。一方、中国は景気対策がGDP比少額であったにもかかわらず、生産活動をいち早く再開し世界需要の取り込みに成功したことで株価も上昇し1.11倍とやや割高な水準。今後各国の経済活動が正常化した場合には需要喪失により株価調整が起こる可能性はあろう。
今回、景気対策の規模から各国の妥当と考えられる株価水準を推定してみたところバブルとは言えないように見えるが、バブルは弾けてみないと判らないとも言われており警戒感は持ち続けたい。
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