インフレの足音

日本の足元1月の消費者物価指数(CPI)は前年比で▲0.6%と相変わらずのマイナス圏でインフレの足音は皆目聞こえず、1990年以降に育った世代にとり物価は下がるものとの固定概念すらあるようだ。ところが世界では、債券マーケットを中心にインフレを警戒する動きが広がっておりやや違和感があるが、ここで世界のインフレ動向をチェックしてみよう。

まず図1で示した日米欧中の直近2年間の前年比CPI推移を見ると、欧米では確かに足元で上昇しているものの、日中はマイナス圏で、未だインフレを警戒するレベルではない。どうやら市場は先行きのインフレを警戒していると考えられ、実際市場による将来のインフレ見通し(BEI)は米10年で2.2%と2年半ぶりの高水準だ。そこで先行きの物価動向を需要と供給に分けて分析してみよう。

・需要サイド…消費の原動力となる購買力を見てみると、昨年からの各国政府による個人給付金などの影響で貯蓄は積み上がり、図2に示すように米国の家計貯蓄は世帯当たり1.9万ドル、日本では世帯当たり1,800万円まで上昇。今後ワクチン接種が行き渡り外出規制が緩和されると、増加した貯蓄を原動力として抑圧された消費行動が一気に爆発する可能性もある。

・供給サイド…CPIの川上にあたる原材料などを見てみると、経済の正常化を見越して石油やCRB(商品)インデックスなどが上昇しており、半導体など中間製品も需給がひっ迫。加えて、株や土地、ビットコイン(2017年当欄にて金を参考にした理論価格は1,700万円と試算)にいたるCPIに影響を与える資産価格全般も上昇している。

つまり需要と供給の両面からCPI上昇圧力がみられることから、BEIの上昇が示すように市場では将来的なインフレが警戒されているようだ。

ところで、前年比CPIは前年同月との比較であり、今後は昨年のコロナショックにより経済活動がほぼ停止した時期との比較となるため数字が上振れし易い。パウエルFRB議長も最近の議会証言において、インフレが一時的に予想されるものの継続的なものではなく、インフレ目標実現には3年以上かかるかもしれないと発言している。一方日本では、今後政府主導によるGoToキャンペーン再開による旅行・食事の割引や携帯電話料金引き下げの影響が予想され、しばらくインフレは期待できそうもない。

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