米財政赤字の行方
3月末にバイデン大統領は2.25兆ドルのインフラ投資を含む経済対策案を発表、期待感から株価は上昇で反応した。一方で同時に発表された財源としての増税案に関し、与党民主党のマンチン上院議員が不支持を表明したため、法案成立までには紆余曲折がありそうだ。ここで昨年来の大規模な経済対策とその財源問題を見てみる。
成立日 金額($兆) 内容 恩恵
第1弾 20/3/6 0.01 ワクチンの研究開発、公共衛生機関への財政支援 医薬品など
ヘルスケア関連
第2弾 20/3/18 2.0 無保険者など個人向け向け支援
民間医療保険に被保険者の検査費負担を無料に ヘルスケア
巣ごもり関連
第3弾 20/3/27 2.2 現金給付や失業保険の拡充、民間企業支援 巣ごもり関連
製造業
第4弾 20/4/23 0.5 中小企業向けの支援 中小企業
第5弾 20/12/27 1.4 個人向け現金給付や失業保険の追加給付
中小企業向けの支援 巣ごもり関連
中小企業
第6弾 未定 2.3 インフラ投資および研究開発 建設、公共
ハイテク関連
合計 8.4
表1よりこれまでに成立した第5弾までの新型コロナ経済対策は合計約6.1兆ドル、第6弾を加えると約8.4兆ドルとなり、GDP対比で約4割と巨額。中身を見るとワクチンや治療薬の開発に加え、コロナ禍で収入を失った個人および中小企業への支援が目立ち、コロナ禍対策としてやむを得ない財政支出だったとは思える。
ところで、第6弾では増税案もセットで検討されているが、米国の借金は昨年末の段階ですでにGDP比130%を超える。2021年の財政赤字は昨年来の巨額経済対策により3.4兆ドルとGDP比15%に膨らむと予想され、民主党のサマーズ元財務長官はこれまでの景気刺激策の規模は未知の領域へのステップでありインフレ圧力を形成しかねないと警告を発している。バイデン大統領はポストコロナ対策として2兆ドルを超える第7弾も計画しているが、これがさらなる財政悪化を招き金利急上昇となれば、経済対策によるプラス効果を打ち消す可能性もある。財政悪化がドルの信認低下につながれば、海外からの資金が流出、ドル安、債券安、株安のトリプル安へと発展するリスクもあろう。
因みに政府が自国通貨建てで支出する能力に制約はなく、財政赤字や国債残高は気にしなくてよいとするMMT理論においては、財政支出拡大をやめて増税を行うタイミングはインフレが発生した時点としている。確かに国の借金がGDP比230%を超える日本の現状を考えると、米国はまだ十分に耐えられるようにも見える。現在が米国にとって財政支出を停止して増税すべき時だったかは、将来、歴史が判断してくれよう。
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