医療面から見た日本の新型コロナ
大阪では1日当たり新型コロナ感染者数が過去最多となり、重症者向け病床の使用率も94%を超えるなど、日本は現在新型コロナ禍の真っ只中にある。解決策とされるワクチン接種も世界から見ると遅れ気味だが、現在の新型コロナとその対策状況を医療面からあらためて見てみよう。
・感染者数…感染者累計は100万人当たり4千人と世界平均の1.8万人と比較し抑制に成功している。
・ワクチン接種…100人当たりの接種回数を見ると現状1.3回と世界の接種回数上位18国の中で最下位。英米の約60回、欧州の約20回から大きく遅れ、5回以下は韓国(2.5回)と日本の2ヶ国のみ。接種が遅れた理由としては、まずワクチン購入の遅れがある。各企業がワクチン開発にしのぎを削っていた昨年5月時点で、英米がすでにワクチン購入契約をスタートしたのに対し、国内の新型コロナ感染が抑制され危機感が薄かった日本が購入契約をスタートしたのは7月末と遅れた。加えて契約数量の少なさがある。欧州も購入契約スタートは8月と遅れたが、契約数量を人口対比4倍超としたことで、現在は人口対比接種率で英米を追いかける。一方で日本は、ファイザー7,200万人分、モデルナ2,500万人分、アストラゼネカ6,000万人分で合計でも人口の1.2倍と少なかったが、週末に菅首相がファイザーから追加のワクチン供給を取り付け、9月末までに対象者全員への接種を想定する。
・ワクチン承認…厚労省は通常のワクチンは開発から承認まで5年以上かかるところ、現在までに特例措置としてファイザー社製ワクチン1種を2/15にスピード承認したが、昨年中に複数種類を承認した欧米には遅れた。この背景には国内の新型コロナ感染が抑制されていたため、臨床対象となる感染者数の確保がままならなかったことが一因と考えられる。
・病床ひっ迫…OECDの統計によると、人口100万人当たりの病院数は、日本は66施設と仏の45、独の37、米の19を大きく上回る。また救急や重症の患者向け「急性期病床」の人口1,000人当たりの病床数でみると、日本は7.8床と米国の2.5床の3倍以上の水準。にもかかわらず新型コロナで病床がひっ迫した理由は、その非効率性にある。病院数、病床数は足りているものの、医師が小規模医院に分散しているため、結果的に医師不足で重症患者を扱えない状況にある。例えば新型コロナ重症患者の最後の切り札とされる「エクモ(体外式膜型人工肺)」は、患者の太もも静脈から取り出した血液に人工肺から酸素を混入し、首の静脈に戻すという大手術となるため、医師が10名程度必要と言われる。政府は病床ひっ迫を受け、コロナ対応の診療報酬を上乗せ、また空床確保料などの補助金を用意し病床1床確保につき最大1,950万円とする措置も追加した。しかし全体の8割を占める民間病院はクラスター発生時の経営への打撃を警戒し患者受け入れに後ろ向き、結局、医師不足と病床ひっ迫は続く。
・コロナ変異種…コロナ変異種は従来型より感染力が約1.5倍とされ、日本の変異種比率は約4割、大阪では7割まで高まっている。1人の感染者が何人に感染させるかを示す「実行再生産数」も全国で1.18、大阪で1.34と感染が横ばいとなる1を超えている。このままだと4月中に大阪の感染者数、重症者数はともに現在の約4倍となり医療崩壊を起こす可能性が高い。
このように見てくると、新型コロナ禍は経済構造だけでなく医療体制の問題点も炙り出した感がある。改善すべきは改善し、足元で猛威を振るうコロナ変異種による感染拡大を何とか食い止めて欲しいものだ。
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