米国株はバブルか
NYダウは、昨年3月のコロナショック時につけた最安値18,500ドル台から直近その約1.8倍となる34,700ドル台まで駆け上がるなど、堅調相場が継続。一方でFRBは4月の金融安定性報告(FSR)で資産価格の急落につながるリスクに警鐘を鳴らすなど、市場には高値警戒感も広がっていた。このような環境下、4月の雇用統計は予想対比大幅に下振れ、加えて4月の消費者物価指数(CPI)は前年比4.2%と2008年以来の高い伸びとなったことで、雇用回復の遅れとインフレ懸念が台頭、足元1週間で1,500ドルの下落となった。ここで足元のNYダウの水準はバブルなのか考えてみよう。
まずは一般的に株価の割高・割安を判断する際に利用する株価指標で見てみる。株価収益率(PER)は直近25倍とリーマンショック時の20倍を上回り割高。一方で米政権による巨額経済対策と金融緩和の恩恵により今後企業収益の増加が予想されるため、予想PERは20倍となり割高とは言えない。次に株価純資産倍率(PBR)を見ると、リーマンショック後は一貫して上昇基調にあるが、直近は約5倍と長期的な傾向値の3倍を越えており割高と言える。
次に現在米株市場が最も注目している雇用と物価の影響を見てみる。雇用はワクチン接種の進展により徐々に改善すると予想される。一方で物価は1980年頃のCPIは年率10%を大きく超えており、足元の4.2%というレベルは極端に高くはないが、今後ワクチン接種の進展によりさらなる上昇が警戒される。
図1は過去50年間のNYダウ(対数表示)と短期金利の推移。これを見ると大幅な株価調整となったITバブル(2000年)、リーマンショック(2008年)、コロナショック(2020年)は、すべて利上げ後に株の下落が生じているようだ。つまり株価調整は物価動向ではなく、FRBの金融政策転換(利上げ開始)後に本格化すると予想される。
CPIに関しては以前当欄で解説したように、今年5月までは前年のコロナショックによる低下の反動により大幅な上昇が予想されるが、その後は上昇幅の縮小が想定される。FRBが物価上昇を一過性とする根拠はこの反動効果の剥落によると考えられるが、4月のCPIは前月比0.8%と年率10%近い上昇となった。仮にこのペースが続くようだとFRBも金融緩和からの出口を模索せざるを得なくなる。実際に利上げとなれば、米株が本格的な調整局面入りの可能性も高まる。 ところで図で示した通り、過去50年のNYダウの推移は、概ね複利利回り7.5%ラインと重なる。これは過去50年間の米国GDP成長率約6%と照らし合わせても妥当と思われ、現在の株価は50年間の傾向線上にありバブルというほど割高ではないことを意味する。因みにラインを式で表すと、NYダウ=1.075の(1971年5月からの月数)乗 ×907ドル(当時のNYダウ) となる。
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