ワクチン接種の現状
日本でもついに大規模会場を使った一般市民へのコロナワクチン接種が始まった。そこで改めて、有効性に対し副作用等も指摘されている状況下でメリット、デメリット(経済面のメリットは自明なので特に健康面などに関し)を考慮してワクチン接種を考えてみよう。
現在日本でワクチン接種されているのは米ファイザー製だが、先週新たに米モデルナ製と英アストラゼネカ製も承認され、購入契約数では合計で約1.8億人分と総人口をカバーできることとなった。
・デメリット…米国での接種において、ファイザー製ワクチンで接種部位の疼痛が約70%、倦怠感、頭痛、筋肉痛が約20%、悪寒や発熱が約10%に報告されており、モデルナ製はそれより微小に数字が高い。副作用等に関する厚労省の発表によると、ファイザー製380万回の接種時点で、副反応の疑い664件、アナフィラキシー107件、死亡例28件。これらの数値から発生確率を計算すると、ファイザー製を接種した場合は副反応0.017%、アナフィラキシー0.003%、死亡0.001%、欧米の接種結果ではモデルナ製の場合は確率がファイザー製に対し約1.01倍に上昇する。
尚、アストラゼネカ製やJ&J製で問題視される血栓の確率は欧州で約0.001%、死亡はそのうちの25%だった。確実な因果関係を確かめるのは難しいが、このワクチンは2種とも製造方法はウィルスベクター型でファイザー、モデルナ製のmRNA(メッセンジャーRNA)型とは異なる。
・メリット…ファイザー、モデルナ製共に有効性は90%半ばで変異種にも有効とされる。つまり最大のメリットはコロナに罹かからなくなること。現在までの約1年間で日本の感染者数は約70万人、死亡者は1.2万人であり、単純計算でコロナ罹患率0.56%、死亡率0.01%となる。今後、変異種の拡大により確率のさらなる上昇が予想され、ワクチン接種による死亡確率(0.001%)を踏まえれば、ワクチン接種を受け入れるというのは正しい判断となる。
ところで国産ワクチンを望む声は多いが、開発は遅れており年内接種の可能性は低そうだ。日本でも以前、遺伝子を活用したワクチン研究が治験直前まで進み、2016年には5ヶ年5億円の政府予算もついた。しかし1992年のワクチン訴訟で国が敗訴して以降、新しいワクチンはほとんど承認されず、予算も2018年で打ち切りとなった。仮に予算が維持され研究が継続していれば、日本製コロナワクチンが華々しい活躍をしていた可能性もある。今後は、現在治験段階のアンジェス、塩野義製のワクチンの実用化が期待される。加えて日本人研究者が米国で開発した、投与量が既存ワクチンの1割以下で済む自己増殖型mRNAワクチンの臨床試験が今夏にもスタートする予定。
・接種状況…一般市民への接種の進捗は遅れている。主な原因として①ワクチン契約量が少ない(ファイザー製は追加分を含め計9,500万人分)、②承認が遅い(モデルナとアストラゼネカ製を追加承認)、③接種体制の不備が挙げられる。①、②に関しては以前当欄にて解説済みなので今回は③に関してだが、医師会は通常医療への悪影響を懸念し中小民間病院では難しいとしている。一方で接種行為は医療にあたるため医師、看護師に限られるところ、厚労省は今回特別に歯科医師に認める(薬剤師には認めない)方針。接種率が欧州トップの英国では人類の危機として一般市民(研修受講者)まで動員してワクチン接種を進捗させた。因みに筆者が無資格で接種すると日本では傷害罪に当るらしい。
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