仮想通貨とデジタル通貨

最近ビットコインの価格が激しく動く一方、各国で中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行が検討されるなど、通貨のデジタル化に関するニュースが多い。ここでデジタル化した通貨について考えてみる。 

デジタル化した通貨には大きく分けて、電子マネー(スイカ、パスモなど)、仮想通貨(ビットコインなど)およびデジタル通貨(CBDCなど)の3種がある。電子マネーはすでに一般的に使用されよく理解されているので、残りの二つに焦点を当てる。

まずビッドコインで代表される仮想通貨はブロックチェーン理論を使っており、10分間の取引全てのデータを書き込んだブロック(電子データ)を取引当初から連ねた台帳として参加者で共有する仕組み。個々のブロックは参加者により確認、承認されるため、承認済みの台帳が延々連なっていくことになる。尚、各ブロックはヘッダと呼ばれるタイムスタンプやナンスと呼ばれる固有の数列を持つが、具体的な承認作業では主要取引参加者は最新のヘッダを含む過去のヘッダ全て(現在320GBくらい)を用いて、アルゴリズム条件を満たす32ビット(2の32乗)のナンス最適解を探す(マイニングと呼ぶ)ことになる。この作業にはコンピューターによる膨大な計算が必要なため大量の電力を使うが、現在では凡そノルウェーの電力消費量と同レベルらしい。図1では最初に最適ナンスを発見したCさんが手を挙げ、残りの人が手元の台帳に新ナンスを用いて検算、過半数が承認すると全員の台帳がCさんの台帳に書き換えられる。仮に改ざんを試みるなら、誰よりも早く新ナンスを発見し、併せて過去のブロックのナンスを全て計算し、他人の台帳を書き換える必要があるため、現実的には不可能。一方、マイニングへの報酬はビットコインがCさんに支払われ、それが2140年まで通貨供給の役割を果たすことになる。因みにビットコインは貨幣の基本機能の3つのうち、①決済機能②価値の貯蔵機能は満たすが、③の価値尺度機能は無い。この弱点を克服すべく開発されたのが、複数通貨バスケットを担保として持つステーブルコインのリブラだ。ただ、このリブラが流通すると結果的に金融政策が機能しなくなるリスクがあるとして、各国中銀が発行に反対したため、その後単一通貨を担保とするディエムに形態を変更して発行準備が継続中。

続いてデジタル通貨のCBDCは、中央銀行の負債であり決済手段として用いられ、デジタル形態ではあるが基本的に現金と同じ。国際決済銀行のリポートによれば、世界各国がデジタル通貨の実験段階に進んでおり、今後3年のうちに人口ベースで世界の20%で流通が始まる可能性がある。ただし、決済や送金においてCBDCの利用が増加すると、現金の利用は減少し民間銀行の役割は縮小すると予想され、またCBDCはゼロ金利下においては各個人のデジタル口座に貯蔵され易く、民間銀行を介しての信用創造機能が働かなくなるなどの問題もある。一方でデジタル化した通貨は、両替や送金などの手間を必要としないことや、空き巣に狙われる恐れもなく、一般的な利便性の観点からも、将来的に普及することも予想される。

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