景気回復が鈍化する中国経済

中国は、昨年コロナ禍からいち早く立ち直り、世界中の生産需要を集める形で経済の急回復を成し遂げ、コロナ禍からの脱出先頭ランナーと称されたが、4-6月期GDPは減速、ここもと勢いがない。

図1は2020年以降の中国株と総合購買担当者指数(PMI)の推移だが、景気に対して先行性がある株価はさえない展開が続いている。景気の先行指数の代表格とされる総合購買担当者指数の推移を見ても、確かに足元は鈍化傾向で好不調の分かれ目とされる50に近づきつつある。理由としては以下のようなものが考えられる。

① 世界経済が正常化に向かっており、集中していた生産が中国以外に戻り始めた…IMFによると、世界各国によるコロナ関連の経済対策はこれまでに総額14兆ドルに達する。いち早く経済活動が正常化した中国がその生産に関する部分を一手に担う形になり、結果的に利益が同国に集中することとなったが、足元では各国経済の正常化により元の姿に戻りつつある。マスクや家電などの特需も一巡しており、中国の製造業関連指標は減速傾向。

② 米国によるハイテクを中心とした対中経済制裁の影響…コロナ禍の最中にトランプ氏から政権を引継いだバイデン米大統領は、対中制裁をさらに強化。貿易摩擦のみならず人権問題など内政にも踏み込み対立は長期化の様相。ファーウェイなど米国から制裁を受けるハイテク企業中心に収益と将来性には不透明感が漂う。

③ 中国政府による自国新興企業への規制強化…中国政府は、企業による情報管理、個人情報等の海外流出を懸念し、新興金融会社のIPOを直前で延期、IPO直後の配車サービス会社のアプリダウンロードを禁止、世界最大のゲーム会社の経営統合を差し止めるなど、世界で活躍しようとする新興企業への規制を強化している。市場は政府関与の拡大に伴う企業の収益性、成長性の低下を警戒している。

④ 不動産関連融資を中心としたデフォルト懸念…中国の不動産価格は都市部を中心に上昇を続けている。都市開発は不動産業者、銀行と地方政府が一体となって行うため、不動産関連ローンは実質的に政府保証と見なされてきた。ところが最近デフォルトが相次ぎ、不動産関連企業の資金繰りの悪化が顕在化、政府は預金準備率の引下げなど中小企業の資金繰り支援に動く。1990年代の日本のようなバブル崩壊の懸念が広がる。

⑤ 少子高齢化の進行による日本化懸念…政府は少子高齢化に危機感を強めており、従来の一人っ子政策を反転させた3人っ子政策に続き、親の教育費負担を軽減するため高額な学習塾の規制強化に乗り出すなど、出生率反転を目指す。足元では少子高齢化に歯止めがかからず、人口減少に伴う中長期的な経済成長の鈍化リスクがちらつく。       

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