東京五輪後の日本株の見通し

東京五輪は開催前の段階においては、大会関係者の相次ぐ辞任や開催日程が総選挙直前となり野党が新型コロナ問題とからめて批判し易かったこともあり、世論調査では開催に対し否定的な意見が半数を上回った。しかしながら、いざ始まってみるとスポーツのもたらす感動に加え、日本勢による過去最多となるメダルラッシュにより世間の批判もやや沈静化、筆者もTVの前でアスリート達に連日熱い声援を送った。  

さて無観客となったことで経済的な悪影響を懸念する声もあるが、メディアの試算では海外からの来日観戦特需1,000億円、国内観戦者の消費支出2,000億円の計3,000億円が無観客化による機会損失。一方で、大会運営全体にかかるオリンピック特需は、通常開催の場合で2兆円との試算となり差引1.7兆円の経済効果になる。また競技場や選手村など大会後の継続利用による経済効果、所謂レガシー効果は、2030年までの累計を試算すると経済活性化・最先端技術の活用が10兆円、施設・選手村などが3兆円の計13.1兆円の巨額に上る。尚、1964年東京大会のレガシーは首都高速道路や新幹線など分かり易いものが多かったが、今大会ではAI技術やVR、センサーなどのデジタル関連ということになろうか。

ここで近年の夏季五輪および1964年東京大会の開催前後の開催国の株価推移を表1に示した。これを見ると、開催前1年間は開催成否への不安感からか株価推移はまちまちだが、開催後1年間はITバブル崩壊の影響を受けた2000年シドニー大会以外の全てで株価は上昇しており、平均上昇率は26%に達する。また、開催後10年間を見ると、その時々の開催国の経済情勢が異なるうえ、レガシー効果の有効期限も定かではないが、ソウル・アテネ大会以外は上昇しており平均上昇率は66%だった。

表1.過去五輪開催前後の各国株価推移

さて、足元の日本株は五輪での日本勢の大活躍にもかかわらず、欧米株に比べ冴えない展開が続く。一方、試算通りの経済効果と過去の開催国における株高という経験則に従えば、来年にかけ堅調な株価推移が期待される。      

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