最高値を更新する米国株

米国経済は4-6月期GDP成長率が年率6.5%と1-3月期の6.3%から加速、さらにアフターコロナに向け世界経済が正常化に向かう中で好調な米企業収益が上振れる可能性もある。加えてバイデン政権による5年間で1兆ドルとなるインフラ投資包括法案が上院で可決、下院を通過し成立となれば過去数十年間で最大の公共投資となる。加えて米上院は3.5兆ドルの来年度予算案を承認した。経済成長に伴いインフレと雇用改善が進む中、FRBは現状の金融緩和策を当面継続する姿勢を示す。当面はゴルディロックス(ぬるま湯)相場が続きそうとして、米国株は最高値を更新中だ。ここで、絶好調の米国株の抱える様々なリスクについて改めてチェックしてみよう。

① テーパリングと利上げ…2013年の有名なテーパータントラム(癇癪)では当時のバーナンキFRB議長がテーパリングに言及しただけで株価が下落したが、その後すぐに持ち直した。今回パウエル議長は既に言及済みとすれば、今後の焦点は利上げタイミングとその後の動きとなる。現在利上げは約2年後と予想されており、過去の利上げ局面における初回利上げの2年前と1年後のNYダウ値動きを表1に示した。これを見ると利上げ前は過去4回全てでダウは上昇しており、利上げ後は勝率5割となる。

② 土地バブル崩壊…1990年代の日本のバブル崩壊や米国のサブプライムローン問題が発端となったリーマンショックの両ケースとも、銀行が地価上昇を見込んで住宅ローンを積極的に推進したことが原因。現在の米住宅価格は急騰しているものの、返済リスクの高い住宅ローン残高は積上がっていない模様。

③ レバレッジ取引の破綻…1998年のロシア危機に伴うLTCMショックや2008年のリーマンショックなどは過度なレバレッジ取引が背景にあった。現在はSPACなどにレバレッジ取引は見られるが、足元では取引減少に転じており、株価暴落につながる程の巨額にはない。

④ 割高の修正…2000年のITバブル崩壊はFedによる利上げやテーパリングが原因との見方もあるが、当時のNASDQ指数の予想PERは72倍まで上昇しており、株価が割高だったことが原因と考えられる。現在のNASDQの予想PERは約30倍で当時に比べかなり低い。

⑤ 米国の債務上限問題…米国財政はコロナ対策による巨額の財政出動もあり、デフォルトの崖に向けたチキンレースの最中にある。過去のように直前で合意に至るとみる市場参加者は多いが、デフォルトリスクを織り込み金融市場が変動する可能性もある。

さて、以上のように並べてみると②から⑤は、今のところ大きな株価下落要因にはなりそうもない。一方で①は、仮に利上げを今から丁度2年後と仮定した場合、NYダウの平均上昇率19%を適用し2年後には42,220ドルと試算される。現在の米国株には既に高値警戒感はあるものの、実際に利上げになるまで保有を継続した方が良さそうだ。       

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