停滞気味の中国

昨年来堅調だった中国経済がここにきてやや減速、世界中にその影響がじわり広がりつつある。経済指標を見ると鉱工業生産、小売売上高、購買担当者指数はいずれも前月比で見て伸びは弱まり、貿易額も足元にかけて頭打ち感が顕著である。景気減速の背景には、①世界的な生産活動再開による反動②米国による中国ハイテク企業への規制強化③中国政府による国内情報産業への規制強化④習主席の掲げる共同富裕論の実践の4点があると見られる。

①世界的な生産活動の再開…いち早く中国経済がコロナ禍から脱出したことで、各国の生産需要が中国に集中し中国経済は昨年急激に回復。但し昨年末以降のワクチン接種進捗により先進各国の経済は正常化に向かい生産が復活。株価も企業収益の低迷を反映し今年は頭打ちだ。(図1)

②米国による中国ハイテク企業への規制強化…中国は香港の一国二制度を半ば反古にし統治姿勢を強めるほか、南シナ海での覇権を狙うなど民主国家との異質性が顕在化。一方で2030年にも中国のGDP世界1位が予想され、危機感を強めた米国は個人情報の漏洩を警戒し中国ハイテク企業との取引を規制、対象企業は販売制約だけでなく半導体調達やソフトウェアの利用制限などの問題も抱える。

③中国政府による中国ハイテク企業への規制強化…中国IT企業の創業者が金融当局や銀行を公然と批判。共産党の一党支配体制への挑戦と受止めた中国政府は、成長性の高い新興企業への規制強化に動いたため、それら企業の株価は年初から半減。日本のIT企業もその影響で業績が悪化、日経平均株価も中国株を追うように下落。(図1)

④習近平主席による共同富裕論と学習塾への規制…習主席は共産党における慣例的な定年68歳となったが、来年の党大会で総書記続投を目指すようだ。そこで国民からの支持を得るべく貧富の差拡大への是正策として、共同富裕論を展開、高額負担を求める学習塾の非営利化を発表した。この影響で中国富裕層をターゲットとし、株価が過去最高値を更新していた欧州ブランド企業株や中国教育株は8月に入り急落した。

さてこれらの動きを一時的な現象と見るか或いは長期化すると見るかだが、筆者は1990年代の日本との類似性から長期化を予想する。例えば、中国による自国IT企業への規制強化は、米国からの要求で導入した日米半導体協定のように、自国企業を窮地に追いやろうとしている。また少子高齢化社会が進行する中で教育コストの低減を狙った学習塾規制は、将来的な学力低下へと繋がった日本のゆとり教育に類似する。さて今後の中国は、日本のように米国の壁に跳ね返されるのか、或るいは100年に一度とも言われる覇権国の交代を演じるのか、いずれのケースにも備えつつ見守るしかない。 

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