欧州経済

ユーロ圏の4-6月期のGDP成長率は前年比+14.3%、前期比でも+2.2%と個人消費の持直しで3四半期ぶりにプラス成長を記録。供給制約の影響下にはあるがサービス部門を中心にリベンジ消費が盛り上がっているようだ。一方で消費者物価指数は前年比3.4%と米国の5%台より低く、ECBはパンデミック緊急買入プログラムを減速することを決定、金融緩和からの出口戦略にかじを切ったものの、株価は比較的堅調に推移している。ここで政治・経済の現状をユーロ圏の主要国毎にまとめてみる。

・ドイツ…総選挙ではSPD が最大議席数を獲得、ただし議席シェアは28%にとどまり、政権樹立には緑の党とFDPの協力が不可欠。2政党の判断次第で、SPDあるいはCDU/CSU との連立政権が誕生、大連立継続となる可能性も残る。政権交代による政策方針の変化が注目されるが、対中、対ロ政策など、メルケル氏のような強力なリーダーの不在により対外影響力や政策推進力は低下しそうだ。メルケル政権の親中政策により、貿易相手国として中国は輸出では米、仏に続く第3位、輸入ではオランダに次ぐ第2位と大きな割合を占める。主力の自動車産業にとって中国はお得意様だが、習主席の掲げる共同富裕政策で富裕層の購買意欲が減退するリスクがある。

・フランス…来年4月には大統領選挙が予定される。マクロン大統領、ルペン国民連合党首に加え元共和党のベルトラン氏が注目を集めつつある。ベルトラン氏が極右のルペン氏を抑えて決戦投票に進む展開となれば市場の安堵材料となるが、まずは12月の共和党大統領候補選が注目される。主力産業としては自動車やエネルギーなど製造業に加え、観光や高級ブランドに代表される小売産業を抱え、アフターコロナの恩恵が期待できる一方、中国リスクもある。

・イタリア…ドラギ前ECB総裁が年初に辞任したコンテ首相の後を引継ぎ、現在の政治情勢は比較的安定している。ただし中国が提唱する「一帯一路」への参加を表明、西側諸国が対中政策を強硬路線に変化させる中で立場は微妙。かねてから財政赤字を指摘されてきたが、GDP成長率が予想以上に高まる見込みであり、2021年の財政赤字は従来の予想水準を下回る可能性が高い。高級自動車産業に加え観光や高級ブランドに代表される小売産業があり、アフターコロナへの期待と伴に中国リスクを抱える。

・スペイン…ワクチン接種完了率は足元でユーロ圏主要4ヶ国中最高の77%に達しており、警戒事態宣言は5月に解除、既に州をまたぐ移動も可能。観光関連がGDPに占める割合は、2019年の12.4%からコロナ禍により20年は4.3%まで低下したが、今後行動制限のさらなる緩和とともに、サービス分野を中心に経済の持直しが期待できる。

・オランダ…半導体露光・ステッパーメーカーで世界1位のASMLを抱えており、関連産業を含めここもとの世界的半導体需要ひっ迫の恩恵を受ける。

域内各国の景気回復には跛行色があるが、アイルランド、エストニア、リトアニア、ルクセンブルク、ギリシャ、ラトビアの6ヶ国がコロナ禍前のGDP水準を回復している。

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