資源価格の上昇
コロナ禍の影響下、供給制約によるモノ不足で世界的に物価への上昇圧力が強まる中、最近は資源価格も大きく上昇しインフレは加速している。商品価格指数(CRBインデックス)が7年ぶり高値、米国原油先物のWTI価格が3年ぶり高値、欧州ではLNGが昨年の5倍以上の価格に高騰している。一方で鉄鉱石や銅、金などの価格は下落しており、値動きに跛行色が見られる。ここで改めて現状を分析してみる。
原油…世界的にコロナ禍からの回復局面で製造業が先行したことにより、製造・輸送工程の原油需要が増加したことに対し、米国でのハリケーンによる製油施設の一時停止やカザフスタン、ナイジェリアの石油施設のメンテナンス時期入りが重なり需給がひっ迫。加えてOPECプラスが米国の増産要求に応じなかったことでパニック買いとなった。また2020年まで産油量世界1位だった米国におけるシェールオイル生産に批判的な民主党バイデン政権の誕生により、産油活動が減速していたことも背景にある。昨年のコロナショックに伴う原油価格急落時に、期近先物がマイナス価格となったのが嘘のようだ。
LNG…炭素一単位当たりの発熱量が石油や石炭より大きく、一方でCO2排出量が少ないとして各国で脱炭素化に向けた発電などの需要が高まっている。今年は偏西風の風向きが変わり、欧州の主要電源である風力発電の発電量減少に伴う代替需要に加え、北東アジア寒波の影響もあり中国が米国産LNG に対する輸入制限を解除、またロシアからのガスパイプライン経由の供給鈍化などが需給ひっ迫の原因。
石炭…石油、LNGの代替需要により価格は上昇。加えて、一大消費国の中国が関係悪化を理由に輸入元を豪州からモンゴルに切替えたが、コロナ禍による陸路閉鎖で輸入が滞ったことから、世界中の石炭を買い上げざるを得なくなり、価格に上昇圧力がかかる。
鉄鉱石…粗鋼生産世界第一位の中国において、習主席がCO2排出量を2060年までに実質ゼロにする目標を掲げ粗鋼生産の削減を指示したことから価格は下落。また足元では住宅関連融資規制による恒大集団の経営不安などを背景にマンション建設が停滞、需給の悪化から価格は弱含む。
銅、金…一大消費国の中国において、主に工業製品に使用される銅の価格は経済減速の影響から下落、一方で金価格は習政権が掲げる共同富裕政策による宝飾品需要の減退などで下落。さらに足元の世界的な金利上昇により、金利が付かない金の価格には下落圧力がかかる。
表は各資源の生産と消費の国別ランキングだが、米国と中国は生産と消費の両側にあり、両国の動向が需給・価格に大きな影響を与えることがわかる。特に、経済政策の影響を受け易い消費のランキングを見ると中国の占める割合が高く、ここもとの共同富裕政策や温暖化対策による電力不足などの影響がエネルギー価格を中心に認められる。また、世界経済の潮流という点では、電気自動車普及や化石燃料企業からの融資引上げなど脱炭素化の流れが一気に進んでおり、結果的に電力不足へと繋がり、却って化石燃料需要を加速しているのは皮肉だ。
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