コロナバブル到来か
昨年来のコロナ禍に伴う経済対策の規模は世界全体で約13兆ドル、トップは米国の4兆ドルで日本は2兆ドルと続く。一方で財政支出拡大の副作用として各国中銀のバランスシートも急速に膨らんだ。
図1は日米欧の中央銀行の資産額(BS)の推移だが、コロナショックの2020年3月から急速に拡大しているのが分かる。欧米では中銀のBSはコロナ前に比べ2倍近くまで膨張、結果的に市場に出回る資金が株式など資産価格の上昇に、加えて足元では一般物価の上昇にも波及したため、各国中銀は資産買入額の減額(テーパリング)に動く。一方で日本は、コロナ対応が遅れたためBSの膨らみ方は緩やかなうえ、GDPの230%に達する政府部門の借金に配慮してか今年に入ってからBSは縮小に転じており、ステルステーパリングとも揶揄されている。
さて巨額の財政支出による景気回復と金余りの影響で、現在、欧米では株価が史上最高値を更新中、消費者物価も米で前年比6.2%、欧州ユーロ圏では4.1%と急上昇している。通常であれば、長期金利は景気回復に伴うインフレ期待から上昇するはずだが、過剰流動性を背景とした債券の好需給に支えられ、米10年金利は1.5%程度とインフレ率を下回っており、結果的に実質金利はマイナス圏にある。
一方で資金の流入先は、株や債券などの伝統的資産に留まらず、土地や美術品、果ては実質金利マイナスの影響で金や仮想通貨にまで至る。仮想通貨の代表格ビットコインは足元で約7万ドルと最高値更新中で、仮想通貨全体の時価総額も3兆ドルと年初来で4倍となった。この仮想通貨上昇の原因には、他資産との連動性の低さや金同様のインフレヘッジ効果を期待した投資行動、加えて新たにETFの組成が認められたことから機関投資家の投資が活発化したことなどもあげられる。
このような資産価格の上昇については、既にバブル化しているとの見方があるが、バブルか否かの判断は事前には難しい。通常、大幅な価格上昇の後の暴落を経て、事後的に異常な価格形成が生じていたと判断されるとそれがバブルといったところか。チューリップの球根1個が家1軒分の価格まで上昇した1800年代のオランダのチューリップバブルや平均年収の10倍を超えた1990年代の日本の住宅バブルなどが代表例。翻って現在の状況を見ると、中国の一部都市の住宅価格は年収の50倍以上、仮想通貨も資金移動機能以外の用途がない割には時価総額が、現実通貨の裏付けとなる中銀のBS並みにまで増大するなど、将来バブルと指摘されそうな現象が見られる。今後中銀のBS縮小が本格化し、過剰流動性の吸収が進行する中での価格動向には注意が必要だ。
因みに現在最もバブル状態にあると思われるモノに、仮想通貨の「シバイヌ」がある。これは2010年頃に仮想通貨への皮肉としてゲーム感覚で組成された「ドージ(犬)コイン」を真似して2019年頃作られたもの。特別な機能は持たないがこの2年で50万倍まで上昇している。私事だが、拙宅では飼い主である筆者をほぼ無視する(ツンデレと呼ぶらしい)柴犬を飼っており何の役にも立っていないが、2年前に仮想通貨「シバイヌ」を何かの記念に千円分でも買っていれば、こちらは5億円になっていた計算だ。今からでも遅くないと購入する投資行動によってバブルは形成されるのだろう。
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