米株価と金利とインフレ

世界規模で広がるインフレとそれに伴う各国中銀による超金融緩和政策からの出口戦略に市場の関心が集まっている。GDP世界1位の米国においては、昨年11月の消費者物価指数(CPI)上昇率が前年比6.8%と30年ぶり高水準となり、またFRBの物価目標2%を8ヶ月にわたり上回ったことから、12月のFOMCでタカ派へと金融政策の舵が切られた。米国民は急激な物価上昇に対し不満を募らせており、物価高はバイデン大統領の支持率低迷の主な要因と考えられる。実際、FRBは大統領による次期議長、副議長の指名直後からインフレファイターへと転じた感もあり、大統領の意向を忖度した可能性が高い。その後市場では、利上げにより先行きの企業業績が悪化するとの思惑から、一時的に株価は下落した。   

ここで過去の利上げ局面を振り返ってみよう。図1を見ると、インフレ鎮静化には複数回にわたる利上げが必要であり、また米株が下落に転じるのは利上げ局面入りから2年程度経過後となることが多い。

特に2000年のITショック以降の2回の利上げ局面では、利上げ途中にリーマンショック(2008年)或いはコロナショック(2020年)が発生し株価が急落、一転して利下げ局面入りとなった。つまり2回とも金利上昇による企業業績悪化というよりは、それ以外の要因による株価下落だったとも考えられる。したがって、今後断続的な利上げが行われた場合、物価抑制効果がどの程度の時間を経て表れるのか過去の経験則では判然としない。足元の市場では、想定される利上げによりインフレ沈静化に加えて景気減速となるリスクを織込み、長期金利の上昇幅は比較的小さくイールドカーブはフラット化が進む。確かに予想通り今年3回の利上げにより短期金利が1%弱まで上昇したとしても、インフレにブレーキがかからない可能性もある。

FRBは2024年までに合計8回の利上げを見込むが、その場合、短期金利は2%強まで上昇する計算になる。改めて図1を見ると、過去において短期金利2%レベルは依然として低金利の領域であり、足元の米企業業績を極端に悪化させるとは思えない。仮に3月に利上げ開始となっても、経験則的には株価の調整は2年後、さらに〇〇ショックは凡そ10年ごと(次回は2030年頃)に訪れており、極端なインフレとならず、利上げペースも現状予想される程度であれば、利上げ開始から2年経過した2024年までは株価の本格的調整局面入りはなさそうだ。

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