金利上昇と銀行株
世界的に広がるインフレの影響で各国の金利は上昇基調に転じ、株価は先進国の中でもインフレが進む米国の利上げを警戒し世界的に調整局面入りした。ところで金利が足元の超低金利状態から多少上昇しても実体経済への悪影響は限定的と思われる一方、銀行など一部業種では金利上昇によるイールドカーブのスティープ化が業績の追い風になる場合もある。図1~3は、日米欧の10年金利と各国銀行株指数の30年間推移。これを見ると、邦銀株は相関が30年間恒常的に高い一方、欧米銀行株指数の10年金利に対する相関は金利レベルが比較的高かったリーマンショック以前は逆相関(金利上昇で株価下落)、2016年以降の低金利局面では順相関(金利上昇で株価上昇)に見える。これはリーマンショック以前は調達金利の上昇が減益要因と見なされたのに対し、2016年以降は金利が大幅に低下したことで調達の影響は低減し、逆に運用金利の上昇が増益要因と見なされていると考えられる。
ここで実際に期間を区切って先進国の銀行株と長期金利の相関関係を調べてみた。表1は2008年のリーマンショック以前と、日欧でマイナス金利政策が採用されるなど世界中で金利が急低下した2016年以降の各国銀行株と10年金利の相関係数を比較したもの。1990年以降のバブル崩壊でいち早くゼロ金利へと突入した日本の相関係数は恒常的に高いが、欧米はリーマンショック以前の相関がマイナス(逆相関)だったのに対し、2016年のゼロ金利政策以降は相関がプラス(順相関)に転じている。
さて、図2はコロナショック以降の各国10年金利の推移だが、インフレ率に応じて各国の金利上昇ペースには差があり、足元のインフレ率が7%の米国に続き5%の欧州では長期金利が上昇傾向。一方、インフレ率が0.8%の日本の長期金利の上昇幅はごくわずかに止まる。各国銀行株も相関係数が示す通り、米国では上昇した一方、欧州では上昇基調に転じたところ。一方、邦銀株はわずかな上昇に止まる。今後、米国に続き欧州そして日本の順で長期金利の上昇が波及していくとすれば、まずは欧州の銀行株、その後日本の金利上昇を待って邦銀株の上昇が見込まれる。
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