止まらない円安

ドル高・円安の奔流が止まらない。一時125円09銭と2015年8月12日以来およそ6年7ヶ月ぶりの高値を記録した。理由は複合的で、①日米金利差の拡大、②資源価格高騰によるドル買い需要の高まりと貿易収支、経常収支の赤字傾向、③日米の潜在成長率格差などである。

①日米金利差拡大…インフレ抑制に本腰を入れたFRBはゼロ金利政策を3月に解除。今年だけでもあと6回、計1.5~2.5%の政策金利引き上げが予想される。一方、物価目標2%の安定確保の目処が立たないと見る日銀は利上げの必要性はないとして、大規模緩和を継続。3月入り後はYCC政策における10年金利の許容上限0.25%を死守すべく、物価上昇を見込む市場との間で国債の無制限買入れ「指値オペ」を駆使した攻防戦を繰り広げる。足元では短期・長期の両面で日米金利差の拡大観測が強まったため、ドル高・円安圧力が増している。今後は、図1の通り、米10年金利は中立金利の2.4%、およびチャートポイントとされる2.5%に達したことで一旦達成感が生じ、もみ合いとなる可能性がある。一方で日本は4月の消費者物価指数2%超えの可能性が高く、仮に10年国債入札が不調となれば、長期金利が急上昇するリスクもあり、今後日米金利差の一方的な拡大にブレーキがかかるかもしれない。

②資源価格高騰…資源を輸入に頼る日本では、資源価格が上昇しても輸入量はさほど減らず、結果的に決済のためのドル買い需要が膨らむ。この動きは貿易収支と経常収支の悪化につながり、さらなる円安となる傾向がある。この背景には、政府によるガソリンに対する補助金や電気料金の上限設定が価格高騰に伴う消費減退や代替物への需要拡散を狙う技術開発意欲を削いでいることがある。但し、ウクライナ情勢が沈静化に向かえば、足元で進んだ資源価格の急激な上昇は一旦減速する可能性もあろう。

③日米の潜在成長率格差…米国の潜在成長率が約2%とされるのに対し日本はほぼゼロであり、教科書的には経済成長の格差から為替はドル高円安となり易い。但し、バブル崩壊後の30年間、成長率では一貫して米国が日本を上回ったにもかかわらず、為替は逆に80円割れの大幅円高局面を経験するなど、成長率格差は為替のメインドライバーにはなり得ないとも言える。

 以上より、円安は図2のチャートポイントである125円で一旦スピードダウンする可能性はあるが、このラインを抜けると次の目途は135円、その上は147円となる。当面の注目材料は、日銀による指値オペの行方とウクライナ情勢ということになろう。

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