日本の金利

 欧米では加速するインフレ抑制のため中銀が相次ぎタカ派に転換、3月に利上げした米国に続き、日本同様マイナス金利政策を採用するECBにも年内利上げ観測が浮上する。上昇基調の欧米金利に倣い円金利も一時的に上昇し、10年国債利回りは日銀がイールドカーブコントロール(YCC)として設定する上限の0.25%に到達したものの、日銀による連続指値オペにたしなめられ反落した。筆者はその直後の新発10年国債#366回の入札で2002年以来の「札割れ」もあり得ると見たが、結果はテール0.02%、応札倍率3.61倍と好調な入札となった。ウォール街には「中央銀行に逆らうな」という格言があるが、改めて本邦投資家および入札業者の恭順さが示された形。3月末に行われた情報ベンダーのアンケートによれば、2022年度中のYCC政策の変更可能性に関し①変動幅拡大はなしとの予想が69%、②年限短期化はなし75%、③ターゲット金利引上げはなし73%、④マイナス金利解除なしは80%に達する。つまり市場参加者の6割以上が今年度中の金融政策変更はないと見込んでおり、結果的に投資行動にも変化はないようだ。

図1は日本国債のイールドカーブだが、年初来YCCの外側の超長期エリア中心に金利が上昇している。このイールドカーブから先渡し1年金利を計算したのが図2で、年初来の金利上昇を受け先渡し金利も上昇しているが、YCCにより0年と10年部分がピン止めされ、カーブ形状を歪めていることが分かる。ところでFRBもECBも昨年までは物価上昇は一時的として、金融政策の変更は当分先としていたが、今年に入りウクライナ危機の影響も加わり予想以上のインフレ加速を受けスタンスを変更した。日本の消費者物価(CPI)上昇率は2月0.9%と欧米に比べかなり低いが、当欄でも指摘した通り4月以降は昨年3月の携帯料金引下げの影響が剥落する。試算では6月分までのCPI上昇分は1.5%となり、物価が2月以降横ばいとなってもCPI上昇率は2%を超える。仮にウクライナ危機の長期化などによりエネルギー価格がさらに上昇した場合、CPI上昇率2%超が続く可能性もある。その場合は日本同様YCC政策を採用、昨年11月に廃止した豪州のように、対象金利が上限を突破してもオペを行わず、事後追認的な中銀の政策変更となり、一気に金利急騰となる可能性もある。一方で日銀の読み通り日本だけ物価上昇が一時的となり、来年にかけCPIが再び低下(*)、あるいは現下堅調な企業業績が米利上げとQT(量的金融引き締め)政策の影響で頭打ちとなり、世界的なリセッション入りとなった場合、日銀のとれる追加緩和策は限られる。既に国債はほぼ買い尽くしており、マイナス金利の深堀り、あるいはETFなどリスク資産のさらなる買入れが候補となり、日銀のバランスシート拡大が続くことになる。  

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