米国のCPI

米国3月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年比8.5%と40年ぶりの高水準となり、市場は物価上昇と景気後退が同時に起こるスタグフレーションリスクを織り込み、金利は上昇、株価の上値は重い。ここでCPIの構成項目をチェックすることで、今後のCPI動向を分析してみる。

図1はCPI上昇率の50年間の推移だが、足元の上昇は急激で40年ぶりの物価上昇との表現が誇張でないことが分かる。直近3月のCPI上昇率8.5%を構成項目に分解、寄与度の大きい順に並べると、①サービス2.8%、②エネルギー2.2%、③交通・輸送1.5%、④食料品1.2%の順になる。ここで各項目の前年比上昇率および物価変動の主要因である原油価格の2年間推移を示したのが図2となる。寄与度でトップの①サービスの前年比上昇率は小さく、一方で原油価格の上昇を反映した②エネルギーと③交通・輸送の前年比上昇率は高い。①サービスの中身を見るとCPI全体の3割のウエイトを占める住居費の上昇寄与度が1.7%と大きい。住居費には住宅価格の上昇など供給サイドタイト化の影響もあるが、サービス全体で見ると可処分所得との相関が強い項目であり、失業率や収入が改善されたことで需要の増加が全体を押上げたと考えられる。②エネルギーの上昇は、主に原油や天然ガスなど資源価格の上昇が原因、原油(WTI)価格推移を見ると昨年7月にはすでに70ドルまで一本調子で上昇している。仮に今年7月にWTIが70ドルまで下落すると前年比上昇率はゼロとなり、エネルギー全体が大幅に低下することになる。③交通・輸送には、年初来半導体の供給制約などで新車供給が滞り価格が大幅上昇した中古車が含まれる。中古車価格のCPI寄与度は1%と高いが、足元で価格は前月比▲3.8%と上昇ペースが鈍化している。今後、供給制約が緩和され新車の供給が増加すれば、前年比でもマイナスへ転じると予想され、既に足元で③交通・輸送の上昇は鈍化している。また輸送費はエネルギー価格上昇に起因しており、②エネルギーと同じく原油価格次第とも言えよう。④食料品は、近年の天候不順に加え、ウクライナ危機を受けて主要生産国ロシア・ウクライナでの減産が見込まれる小麦の価格動向の影響が大きく、以前当欄で指摘した通り、当面は価格の上昇が予想される。

3月のCPIからエネルギーと食料品を除いたコアCPIも前年比6.5%と引続き高水準だが、前月比では2月の0.5%から鈍化した。上記のように今後食料品価格の上昇は予想されるものの、原油価格がさらに上昇しない限り、CPIは今夏以降ピークアウトの可能性がある。今後のCPI予想においては、住居費を含むサービス価格の動向が重要であり、原油価格と共に可処分所得の原資となる平均時給の推移に注目する必要がある。  

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