円安と日経平均株価
ドル円(JPY)相場が129円台を付け20年ぶりの円安となるなか、従来であれば円安を好感し日経平均株価(NKY)は上昇するところだが、上値は重く今回はいつもと異なるようだ。アナリスト分析によると、日本では資源価格上昇と円安の同時進行は資源輸入国の弱さから貿易赤字拡大につながるとか、輸出企業が製造拠点を海外に移転させたため、などの理由で経済が円安の恩恵を受け難くなっているとの指摘がある。鈴木財務相も「今回はどちらかというと悪い円安」と発言、円安は日本経済にトータルでプラスとしていた黒田日銀総裁も「急速な円安は日本経済にマイナス」と従来路線を修正した。ここで足下のNKYの足踏みが、円安のプラス効果剥落を予見した動きなのかを回帰分析を用いて検証してみよう。
図1は1996年以降のNKYとJPYおよび米NASDQ指数の推移。以前、当欄でNKYの動きは概ねJPYとNASDAQ指数の動きで説明できるとしたが、足元においてもこの関係は継続している模様。そこでNKYを対象としJPYとNASDAQ指数を説明変数として回帰分析してみたのが図2の赤線。
具体的な式は、NKY推定値①=135.1×JPY+1.252×NASDAQ‐3,904となり、その決定係数(R2)は0.72。一般的に0.5超であれば説明能力は高いと評価されるので、NKYの動きをJPYとNASDAQで十分に説明できると言える。この式によると直近のNKY推定値①は30,582円となり、実際の株価は推定値より低いことになる。
因みにNKYの足を引っ張るとされる貿易収支の悪化や海外投資収益の影響を見るために、日本の経常収支を説明変数に加え、同じ期間で回帰分析したのが図2の青線。R2は0.72と推計値①と同じく高い評価だが、足元のNKY推計値②は30,351円となり、図でわかる通り推定値①とほぼ変わらず、説明変数に経常収支を加えても説明力は向上しない。これはJPYと経常収支が概ね同じ動きをするためと考えられる。ちなみに近年悪化を加速する日本の債務対GDP比率を変数にとるとR2は0.76と多少改善する。
以上の分析から、円安はNKYにとって昔と同様にプラスと言えるかというと、必ずしもそうではない。過去(2016年)の同手法による分析時のR2が0.9と高かった回帰式を、現在まで延長したNKY推計値③は足元で38,443円となり、図2を見ると③は2018年以降に上方に大きく乖離している。これは分析対象期間が異なることがそもそもの原因だが、それ以外にも2018年以降何らかの説明変数のウェイトが恒常的に上昇したのが原因かもしれない。 ドル円(JPY)相場が129円台を付け20年ぶりの円安となるなか、従来であれば円安を好感し日経平均株価(NKY)は上昇するところだが、上値は重く今回はいつもと異なるようだ。アナリスト分析によると、日本では資源価格上昇と円安の同時進行は資源輸入国の弱さから貿易赤字拡大につながるとか、輸出企業が製造拠点を海外に移転させたため、などの理由で経済が円安の恩恵を受け難くなっているとの指摘がある。鈴木財務相も「今回はどちらかというと悪い円安」と発言、円安は日本経済にトータルでプラスとしていた黒田日銀総裁も「急速な円安は日本経済にマイナス」と従来路線を修正した。ここで足下のNKYの足踏みが、円安のプラス効果剥落を予見した動きなのかを回帰分析を用いて検証してみよう。
図1は1996年以降のNKYとJPYおよび米NASDQ指数の推移。以前、当欄でNKYの動きは概ねJPYとNASDAQ指数の動きで説明できるとしたが、足元においてもこの関係は継続している模様。そこでNKYを対象としJPYとNASDAQ指数を説明変数として回帰分析してみたのが図2の赤線。
具体的な式は、NKY推定値①=135.1×JPY+1.252×NASDAQ‐3,904となり、その決定係数(R2)は0.72。一般的に0.5超であれば説明能力は高いと評価されるので、NKYの動きをJPYとNASDAQで十分に説明できると言える。この式によると直近のNKY推定値①は30,582円となり、実際の株価は推定値より低いことになる。
因みにNKYの足を引っ張るとされる貿易収支の悪化や海外投資収益の影響を見るために、日本の経常収支を説明変数に加え、同じ期間で回帰分析したのが図2の青線。R2は0.72と推計値①と同じく高い評価だが、足元のNKY推計値②は30,351円となり、図でわかる通り推定値①とほぼ変わらず、説明変数に経常収支を加えても説明力は向上しない。これはJPYと経常収支が概ね同じ動きをするためと考えられる。ちなみに近年悪化を加速する日本の債務対GDP比率を変数にとるとR2は0.76と多少改善する。
以上の分析から、円安はNKYにとって昔と同様にプラスと言えるかというと、必ずしもそうではない。過去(2016年)の同手法による分析時のR2が0.9と高かった回帰式を、現在まで延長したNKY推計値③は足元で38,443円となり、図2を見ると③は2018年以降に上方に大きく乖離している。これは分析対象期間が異なることがそもそもの原因だが、それ以外にも2018年以降何らかの説明変数のウェイトが恒常的に上昇したのが原因かもしれない。
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