金利上昇でなぜ高PER株が売られるのか
一般的に金利が上昇すると株価は下落する。足元で急激に金利が上昇した米国でも、金利上昇に合わせハイテク株を中心として株価下落が続き、ついには年初来安値を更新した。ここで新聞などでは当たり前のように、「金利上昇で高PERのハイテク株(あるいはグロース株)が売られ」と解説されるその仕組みを今一度確認してみよう。
そもそも何故株を買うのかだが、基本的には配当受取りか値上がりによる収益を期待している。
・配当狙い(株式の配当利回りが預金など低リスク商品の利回りを上回ることで儲かる)
投資家は基本的に現金を保有するが、そのままでは資産として増えないので金利が付いた預金あるいは国債などの固定金利商品を購入する。日米欧では近年低金利政策により市中金利がゼロ近辺となり、預金も国債も投資対象としての魅力が低下した。そこで企業の倒産リスクや減益リスクに対し配当利回りが高いと思われる株式への投資シフトが起こる。その後金利が上昇すると、配当利回りの市中金利に対する優位性が低下することに加え、借入の多い企業の収益悪化や経済全体の減速懸念から株式保有リスクが上昇するため逆の動きが発生、株式は売られる。これが現在、米国株が売られる理由の一つ。
・値上がり狙い(グロース株は無配でも収益拡大による株価上昇で儲かる)
年率20%など高成長が見込めるグロース株には、利益を配当により株主還元するより事業に再投資することでさらなる利益拡大を狙うケースが多い。実際GoogleやAmazonは無配を続け、利益を再投資或いは自社株買いに振り向けることで一株当たり純資産額を向上させ、株価は上昇を続ける。ここで金利が上昇すると、新興企業は一般的に借入れが多い傾向にあり、新規借入れによる事業拡大の難易度が上がるうえ、返済負担が増加するため収益は悪化する。一方、無配でも利益が年々増加するような高成長企業の場合、将来利益の割引率が上昇することで現在価値は減少、株価は下落する。
図1は、今後5年間、毎年2倍のペースで増益が見込まれる高PER成長企業の株価を、現在の資産価値と将来の利益から説明したもの。企業が保有する資産価値は、それぞれの現在の資産価格の合計として算定される。一方で将来の利益は、その年限に応じた金利により現在価値に割引かれるため、金利水準の影響を大きく受ける。金利がゼロ(ケース1)から5%(ケース2)へと上昇する場合は、将来の利益額(n年後=100×2n-1)は同じでもその現在価値は3,100から2,534へと20%ほど減少する。つまり将来の増益期待が大きい高PER株ほど、金利上昇に伴う株価への下落圧力は大きいことになる。
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