日本のCPI上昇は一時的か?
日本の4月の総合CPIは前年比2.5%(コア2.1%)と日銀の目標とする2%を超えたが、日銀はCPI上昇を一時的なものとして金融政策の現状維持を続ける。さて、このCPI上昇は一時的との発言は、以前パウエルFRB議長やラガルドECB総裁からも聞いたが、結局その後修正しインフレ退治へと舵を切った。ここで日銀もいずれ見解を変えることになるのか、物価への影響が大きいと考えられる原油価格の動きから日米欧のCPI推移を見てみよう。
図1は過去15年間の日米欧CPIの前年比上昇率と原油価格(ドル建て)の推移。原油価格の上昇はガソリンなどの直接的な価格上昇以外にも輸送費や光熱費、或いはナイロンなど繊維、プラ容器など幅広い商品価格の上昇へと波及する。図1を見ると各国CPIは概ね原油価格に歩調を合わせるが、欧米のCPIと原油価格の動きのタイムラグが短いのに対し、日本のCPIは遅れ気味に見える。米国は世界最大の産油国であると同時に消費国世界第1位でもあり、米国経済の過熱(インフレ要因)は原油価格上昇へと直結し、タイムラグは少ないと考えられる。一方、日本は原油を主として輸入に頼るため輸送や貯蔵などに時間がかかり、CPIの変動に遅れが出るようだ。ところで日欧では、原油に限らず輸入品全般を自国通貨建てで購入するため、CPIの動きには為替変動の影響も反映され、米国ほど連動性は高くない。
そこで自国通貨建ての原油価格の変化が、何か月後に各国CPIへの影響として観測されるかを調べたのが表1。これを見ると欧米では原油価格の影響が翌月のCPIに現れるのに対し、日本では比較的長期に分散していることがわかる。図2はオイルショックを含む50年間の円建て原油とCPIの推移。これを見るとバブル崩壊後には原油価格上昇の影響がCPIに現れるのが遅れ気味であり、デフレ経済下における人件費削減などの企業努力によりCPIの上昇を抑えていると思われる。
さて今後の日本のCPI推移を予想すると、原油価格上昇の影響がゆっくりと現れることに加え、5~6月に携帯料金引下げの影響が前年比0.4%程度の上昇要因であることから、CPI上昇率は3%程度になりそう。FRB、ECBともにCPIが5%を超えてから慌ててインフレ抑制策へと舵を切ったが、遅すぎとの批判もある。今後、海外旅行客の受入れ再開などから、モノが安い日本でも潜在成長率0%を大きく超えるようなCPI上昇が続く可能性が高い。欧米同様、日銀の政策変更が遅すぎとなるリスクもあり、予断を許さない。
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