外国人観光客受け入れ

5月の世界経済フォーラム年次総会で発表された観光競争力ランキングで日本は初の1位。また先日、政投銀と日本交通公社が、世界12地域計6,139人に「次に海外旅行したい国・地域」はどこか聞いたところ、アジア、欧米豪ともに日本がトップという結果だった。海外からの熱い視線を受け、日本政府は新型コロナウイルスの感染拡大を警戒しつつも、6月10日に海外観光客の受け入れを2年2ヶ月ぶりに再開。受け入れに際しての感染防止ガイドラインを以下のように設けた。

・団体ツアー(団体旅行)であること・出国前72時間以内のPCR検査で陰性証明を取得すること・コロナ感染リスクに応じて国・地域を赤、黄、青色の3段階に区分、青色:ワクチン接種の有無にかかわらず入国時PCR検査、入国後自宅等待機は不要、公共交通機関の使用可。黄色:ワクチン接種証明書があれば青色と同様、それ以外は赤色と同じ。赤色:3日或いは7日間の待機期間が必要。

これを見ると、せっかく旅行に来ても3日間待機では敬遠されると思われ、当面は青色(主要先進国を含む98ヶ国)と一部黄色の国からの旅行者が想定される。

ここで今年度の開国効果、つまりインバウンド消費の規模をコロナ禍前の2019年の実績をもとに試算してみる。2019年度は約3,188万人が来日し、インバウンド消費の額は計約4.8兆円にのぼったが、表1は主要国別の内訳。

受入れ上限が2万人/日のままだと開国効果は1.1兆円と試算されるが、随時上限は引上げられると予想される。そこで、旅行者は参院選まで上限となる2万人/日、参院選後は上限が撤廃されコロナ禍前の9万人/日ペースへ加速すると予想。ただし、一人当たり消費額が大きい中国および香港は11月の共産党大会までゼロコロナ政策の下で出入国を厳しく制限されると想定され、今年度の来日は実質ゼロを見込む。この場合、今年度のインバウンド消費は約3兆円。そして、旅行者が米ドル換算で以前と同額消費したとすると足元の円安の影響から円換算では1.2倍となるうえ、欧米と比較した日本の低インフレを踏まえると消費のさらなる拡大が期待できよう。

20年ほど前、職場の同僚から、友人(フランス人)が来日し、地方へ観光に行った際に立ち寄った酒屋でボルドーワインが数年前の価格のまま販売されているのを発見、その店のセラーにあるワインを買い占めたと聞いた。ボルドー5大シャトーのワインは1990年代日本では2万円程度だったが、2000年代に入り中国にワインブームが到来、ボルドーワイン全体が値上がり、例えば日本での人気が低く比較的安価だったシャトーラフィットが1本約5万円まで急騰したのを覚えている。

今回のコロナ禍による2年間の鎖国により海外との価格裁定が働かなくなり、例えば米国人から見ると日本製品だけでなく、マクドナルドのハンバーガーでさえドル建てでは激安に見えるらしい。かつて1990年代のバブル真っ只中において、仏の高級衣料品店のスカーフを日本からの旅行者が棚ごと購入したという逸話もあるが、今回はその逆の光景が日本で見られるかもしれない。

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