来年の米金融政策

米7月の消費者物価上昇率は前年比8.5%と高水準。引続きFRBが目標とするインフレ率2%から大きく上方に乖離している。7月のFOMCでは今後も大幅利上げを継続する方針を明確に示し、物価上昇を抑制するためには潜在成長率を下回る水準での成長もやむを得ないとしている。一方、FOMC後の会見でパウエル議長が「金融政策のスタンスがさらに引き締まるにつれ、利上げペースを緩めることが適切となる可能性が高い」と発言したことで市場は来年利下げを織り込む展開となり、結果として先行きの金融政策に関し当局との間でずれが生じている。

ここでFOMCメンバーが予想する将来のFFレートのチャート(ドッツ)を図1に示した。FRBは毎年3,6,9,12月にドッツを公表しており、図1は今年6月のFOMCのもので、各メンバーの予想が点で示され総意は平均値として計算される。これを見ると、年末時点のFFレートは複数回の利上げにより現在の2.375%から3.375%へ1%上昇、翌年も3.75%への上昇を予想していることがわかる。

一方で、市場で取引される米国債の金利を見ると、1年3.27%、2年3.26%、3年3.2%と償還が長いほど金利が低下する逆イールドの形状となっており、先行きの利下げを織り込んでいるようだ。ここで足元、1年後、2年後の1年物金利を求めたのが表1。

これを見ると、市場は1年物金利が足元の3.27%から翌年には3.25%、2年後には3.08%へと毎年低下すると予想していることがわかる。またFFレート先物を見ても2023年末に3.15%と今年末の3.59%よりも低く取引されており、やはり来年の利下げを見込んでいる。

地区連銀総裁 コメント

バーキン(リッチモンド) FRBはインフレ率を2%に戻すと確約し、必要なことを実施すると表明している

デイリー(サンフランシスコ) 2022/9は0.5%利上げが基本、0.75%も排除しない

エバンス(シカゴ) 2022末迄に3.25~3.5%、2023末までに3.75~4%に引上げる可能性がある

ブラード(セントルイス) 2022年末には3.75~4.0%が望ましい

カシュカリ(ミネアポリス) 2023年末までに4.4%への上昇を見込む

FRBと市場の政策金利見通しが乖離している現状に対し、最近FRB高官は、市場が勘違いしているとのシグナルを繰り返し送っている。過去においては市場が正解だったケースも多々あるが、今回はインフレの高止まりが想定されており、FRBに軍配が上がると予想する。 

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