米国インフレピークアウトの兆し

米7月の消費者物価(CPI)は前年比8.5%となり6月の同9.1%から減速、加えて前月比0%となったことでインフレがピークを打ったと見る向きも多い。足元では原油や住宅価格が下落基調に転じており8月のCPIの一段の減速を予想する声も聞こえるが、ここで予測値を単純化して算定してみる。   

CPIの推定は通常、対象品目300以上を積み上げて行うが、ここでは主要項目ごとのCPIへの寄与度をウェイト×変動幅として概算してみる。主要項目は、食料(ウェイト13.4%)、コア材(21.0%)、コアサービス(24.6%)、エネルギー(9.2%)、及び帰属家賃(31.7%)。なお前年比32.9%と上昇率の高いエネルギーやウェイト31.7%の帰属家賃は影響が大きいため個別に分析、食料やコア材、コアサービスは、対象品目が多い一方でウェイトが小さいため、7月までのトレンドが継続すると仮定した。

・エネルギー価格…算定対象にはガソリンのほか電力、ガスなども含まれるが、図1に示すように基本的な動きは原油価格(WTI)との相関が高い。米国は石油消費国であるとともに産油国でもあることから中間貯蔵や輸送などの過程が少なく、石油の価格変動がCPIに反映されるタイムラグは約1ヶ月と短め。WTI価格は今年3月に1バレル123ドルの高値を付けてから下落基調に転じたが、8月の総合CPI前月比に対する寄与度は▲0.30%と試算される。

・帰属家賃…図2を見ると、帰属家賃は住宅価格にリンクするものの、連動のタイミングは16か月程度遅れる傾向がある。これは賃貸契約が年単位など長期となるため、住宅価格の家賃への反映が遅れることが主因と思われる。昨年から帰属家賃は一方的に上昇するが、ケース・シラー住宅価格指数の方は、昨年半ば以降、価格と金利上昇の影響で既に頭打ちとなっている。反映までのタイムラグを考慮すると帰属家賃にその影響が現れるのは今年10月頃と予想され、8月は7月分と同等の上昇スピードが続くと想定、総合CPI前月比への寄与度は+0.03%となった。

・総合…表1で5項目の7月からの前月比に対する寄与度を全て合計すると▲0.39%。この結果、8月のCPI総合は前年比で8.1%(=8.5%-0.39%)となる。

仮に予想通りとなれば2か月連続のCPI前年比減速となり、マーケットは改めてインフレのピークアウトを織り込みに行くことになりそうだ。

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