崖っぷちの日本経済

バブル崩壊後の日本は失われた30年と言われるように経済の低成長が続き、国家財政は税収が伸び悩む中、少子高齢化が進行したため社会福祉関連の支出が膨らみ赤字幅は拡大。足元ではデフレ対策や新型コロナ対策に伴うさらなる財政負担増に対して、日銀による国債の大量買取りを伴う異次元緩和策を支えに国債発行残高はさらに拡大、IMFによると日本政府の借金はGDP比263%と先進国では断トツトップとなった。今年こそはコロナ感染の沈静化から経済再開に伴う税収増、その上で財政赤字の縮小が見込めるかと思いきや、今度はインフレ対策として赤字国債を財源とするガソリン補助金や低所得世帯への給付金支給策など、相変わらずのバラマキ策で財政赤字縮小は見込めそうもない。国民=有権者の不満が高まると、補助金政策頼みで財政赤字が膨らむ政治手法、所謂ポピュリズム政策である。通常なら野党が与党政府のバラマキ政策を批判、ブラジルでも緊縮財政を掲げたボウソナロ氏が知識層を中心に票を集め大統領選を制したが、日本を見ると野党は一層のバラマキを主張するだけで、緊縮財政支持層の投票先はない。

このような状況下、財務省は2023年度予算の各省庁からの概算要求を締め切った。案の定、一般会計の概算要求額は110兆円台と2022度の111.7兆円に次ぐ過去2番目の規模へ達した模様で、今後見込まれる補正予算と合わせると2021年度から続く140兆円規模となりそうだ。一方の税収は、2021年度は新型コロナ禍からの企業業績回復により法人税収が伸びるとともに、消費税や所得税も堅調で67兆円と過去最高を更新。2022年度はさらなる増加も期待されるものの、歳出の140兆円には遠く及ばず、財政赤字の拡大に歯止めはかからない。

今のところ政府は国債増発の手を緩める気配はないが、将来的には国債の買い手が足りなくなる可能性がある。ちなみに現状は、国民の現預金約1,200兆円が、日銀当座預金を通じて約1,200兆円の国債購入に充てられている。今後さらなる国債増発で買い手を海外に求めた場合、彼らが満足するレベルまで金利は上昇、結果的に利払い負担が増加し一層の財政赤字を招く可能性がある。加えて、現状の貿易収支・経常収支の赤字が続いた場合、国の信用力の低下により円安が急激に進むリスクもある。円安は輸出企業の収益を底上げするものの、さらなる輸入物価の上昇と貿易赤字をもたらす。ところで財政赤字拡大、金利上昇、インフレ進行と通貨安は新興国が経済危機に陥る典型的なパターンであり、日本経済も経済危機の崖っぷちにあるように見える。

ところで、米国のノーベル賞経済学者サイモン・クズネッツの「世界には4種類の国々がある。先進国と新興国と日本とアルゼンチンだ」という言葉がある。これは先進国と新興国の間には大きな壁があり、その壁を超えたのはアルゼンチンと日本だけという意味。アルゼンチンは100年前には先進国だったが、軍事政権の台頭とバラマキ政策により新興国に転落した。一方の日本は第二次大戦敗戦からの奇跡の復興を遂げ、先進国の仲間入りを果たした。その日本も今やGDP3位の座も風前の灯。一人当たりGDPで見ると28位まで転落しており、このままではアルゼンチンと同じ道を辿り新興国へと逆戻りする可能性すらある。どこかでこの流れにブレーキをかける必要があるが、ここは岸田政権が掲げる新しい資本主義、それに基づく堅実な経済財政運営を期待したい。

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