止まらない円安

ドル円(JPY)は、今年3月に6年間におよぶ100円~120円のレンジを上抜けてからその勢いは止まらず145円台に達し、インフレ加速を懸念した政府はついに24年ぶりの円買い介入に踏み切った。ここで為替動向をファンダメンタルズから分析してみる。為替が動く要因としては経済(GDP)成長率、貿易収支、経常収支そして金利のスプレッドなどが挙げられる。

<経済成長率、貿易収支>…まずGDP成長率および貿易収支とJPYの長期にわたる動きが図1。GDP成長率は変動が激しいため5期分の移動平均値からの乖離スプレッドを利用したが、JPYとの相関係数は0.3と低め。一方で貿易収支は前四半期増減率の差との関係を見てみたが、データを遡れる1993年以降で見て相関係数は-0.1とほぼ無関係であった。

<金利>…図2は日米の10年金利差および10年実質金利差とJPYの推移。尚、10年実質金利は10年名目金利から10年物ブレークイーブンインフレレート(BEI)を引いて算出。一般的に為替は2国間の金利との連動性が高いと言われるが、グラフを見ても相関は高そうだ。まず日米10年金利差とJPYの関係を見ると1987年以降35年間の相関係数は0.25、1990年代の相関は比較的低いが2000年以降の相関は高く、2004年以降の相関を計算すると0.5まで上がる。日米実質金利差との相関はさらに高く、2004年以降で0.85となる。

<JPY推計値>…以上から、JPYは現状日米10年実質金利差との相関が高いので、回帰分析によりJPYを日米実質金利差で表したのが下記の式、現在の推計値は119.2円と円高寄りになる。

式:JPY=106.575 + 日米実質10年金利差 × 7.042  (決定係数0.72)

足元の為替介入の効果は需給調整にと止まるため限定的であろう。一方で今後、日銀が引締めに転じ円金利上昇となれば、金利差縮小により円高となり、最終的に推計値に近づくと予想される。

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