バラマキ政策で日本経済は救えるか

日本ではインフレ対策としてガソリン補助金に続き住民税非課税世帯への1世帯5万円の給付、足元では電気代の負担を軽減するために1世帯あたり月額最大2千円程度を支援する案の検討に入った。ちなみにドル建ての原油価格はすでにロシアによるウクライナ侵攻前の水準まで戻っており、現在のガソリン補助金はどちらかと言えば円安補助金となり、公平を期すならば補助対象は拡げるべきだろう。IMFによる試算では日本の債務額はGDPの250%と先進国の中で最大にもかかわらず、日本政府は補助金で問題解決を図る傾向が目立ち、政府の債務増加ペースは加速している。英国のトラス首相が財政政策の失策に伴う市場の混乱がもとで辞任に追い込まれた現実を踏まえると、日銀のYCC政策で押さえているとは言え10年以下の金利変動の小ささは不気味でもある。

21年度予算はコロナ対策として財政支出を大判振る舞いしたため、GoToトラベルの8千億円を含め年度内に使いきれず22年に繰り越した経費は22.4兆円と巨額だった。各省庁が補助金名目でお金を配りたがる背景がここにある。今後アフターコロナに向け経済活動が正常化するなか、コロナ対策費を含む22年度補正予算も昨年とほぼ同額の30兆円程度となりそうで、このままだと23年度への繰越金はさらに巨額となりそうだ。本来は余ったお金は債務返済へ回すべきと思うが、政府にその気配はない。

政府税収は67兆円に対し社会福祉関連支出が約40兆円。特に高齢者医療費、介護費がかさんでおり、今後高齢化が進むとともにさらに増加する。労災保険などを除く日本全体の概算医療費は21年度に過去最高の44.2兆円で、後期高齢者の一人当たり医療費は75歳未満の約4倍にのぼる。つまり後期高齢者が35兆円、75歳未満が9兆円である。後期高齢者の窓口負担は1割なので自身による支払総額は3.5兆円、残りは31.5兆円でそのうち約4割を現役世代の保険料からの拠出金、残りの約5割となる16兆円は公費で賄う。仮に繰越金を回すことで埋め合わせれば、一時的に社会福祉関連以外にも財政資金が回るうえ、省庁や案件毎に繰越しができないとなれば過大な予算請求も避けられ、結果として財政支出全体も減少する可能性がある。

ところで約4割を賄う現役世代からの拠出金は、健康保険組合が加入者の医療費以外として追加負担しているもので、拠出金は加入者医療費の実に85%まで上昇している。日本人の平均給与は1992年には470万円だったが足元では430万円へと減少、可処分所得はさらに減少している。この背景には全労働力人口の64%を占めるサラリーマン(正社員)の社会保障費の負担率が9.5%から15.5%へ上昇したことがある。さらに厚生年金や介護保険料などを加えると40歳正社員の給料の実に29.3%が公的保険料に回っている。

このように可処分所得が減少していることに加え、最近は物価上昇とコロナの影響で外食や遊行費など消費支出は抑制され、結果としてサービスや小売業の業績は振るわない。新型コロナ禍で収入が減った世帯に無利子で資金を貸し付ける「コロナ融資」も1.4兆円にのぼるが、来年1月からの返済スタートにあたり、サービスや小売業が多い中小企業の従業員などでは収入が足りず返済できないケースも危惧されている。一番採り易い層からお金を搾り取り続けた結果、日本経済が沈没しかけているように見える。

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