米国10年金利の予想

米国では沈静化しないインフレを反映し金利が上昇、指標の10年金利は14年ぶりとなる4.2%台乗せとなった。今年は米金利上昇の影響で米国だけでなく世界中の債券市場が下落、株式市場も調整局面入り、加えて米ドルの独歩高がその他通貨安を誘発し、日欧では貿易赤字が大幅拡大、新興国では自国通貨換算で対外債務の増加へと繋がった。ここで金利上昇の原因となるインフレ動向を踏まえ、米金利の先行きを占ってみよう。

<インフレ(CPI)予想>

現在のCPIは寄与度の大きい項目から見ると、帰属家賃(寄与度2.2%)、食料品(1.5%)、エネルギー(1.4%)がけん引している。ここでCPIを予想するにあたり、エネルギーに関して原油価格は今年6月にピークを付けてその後は低下基調にあるが、今後は冬場を迎えることもあり横ばいを想定。帰属家賃に関しては、賃貸契約の更新頻度が1~2年で家賃は住宅価格の動きに対し14か月程度のタイムラグがあることから、今10月にピークを迎えその後は下落基調に転ずると予想。食料品はウクライナ危機の影響もあり全体的に上昇中だが、米国では食料品以外も含め賃金上昇にリンクする想定。賃金上昇率は凡そGDP成長率に連動するので、IMFによる米GDP成長率予想2022年度2.3%、2023年度1.3%(2021年の成長率は5.7%)が翌年の賃金に反映すると仮定する。以上の前提をもとに今後のCPI推移を予想したのが図1。予想では来月発表の10月CPIは前年比7%半ばに下落、その後2023年夏にかけて6%割れとなる。

<金利予想>

まず下記3通りの一般的な考え方に基づき、10年金利を予想してみる。

・カーブ分析…現状のイールドカーブを前提として、一定の条件を想定した場合の将来金利を試算してみる。ここでは先渡し1年金利による複利運用と10年債の複利運用の投資効果を比較し、当初3年間の累積収益が均衡する3年後の10年金利を算定すると4.5%となる。

・金融当局…現時点でFOMC参加者が予想するFFレートチャート(ドッツ)によると、今回の利上げ局面におけるFFレートの最高金利は2023年中の4.6%。

・フィッシャー方程式…「名目長期金利=潜在成長率+予想物価上昇率+リスクプレミアム」

IMFによると2023年の米国の成長率予想は1.3%、期待インフレ率(BEI)は2.6%、その上でリスクプレミアムを10年金利の過去50年間の標準偏差0.8%として算定すると名目長期金利は4.7%となる。

以上を踏まえ、CPIが予想通りとなれば12月の利上げ幅は0.5%、その上で年明け以降、エネルギー価格や平均賃金が下落基調となればCPIの低下とともに利上げ打止めも視野に入ると思われる。この段階では10年金利反転の可能性も高まると考えられ、上記予想にて示した4.5%程度が今回の金利上昇局面のピークになる可能性が高い。     

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