分散投資
一般的に景気減速、株価下落となれば中銀が政策金利の引下げに動き債券価格は上がり、逆に景気と株価が過熱すれば利上げによるブレーキで債券価格は下がる。つまり株式と債券の価格がシーソーのように動くことを期待し、資産クラスにおけるリスク分散の基本として債券と株式に分散投資をする。ところが資産運用の先進国である米国では、中銀がインフレ高進を抑制するため景気への悪影響を覚悟した上でハイペースの利上げを敢行、金利上昇により債券価格は急落。一方、株式市場も急ピッチの金利上昇を受けた景気後退(リセッション)、あるいはハイパーインフレの同時進行(スタグフレーション)への警戒感から株価は下落。結果として債券も株式も下落し、分散投資がうまく機能していない。米国の一般的な投資家はリスク量削減のために債券や株式を売却したものの、次に何を買えばよいか悩んでいる。本邦投資家も同様で、日本株は米株と比較して下落幅は小さいものの、債券は超長期エリアを中心に下落した。このような現実を踏まえ、改めてどのように資産を分散して投資すればよいのかを考えてみる。
円資金による投資を前提としてまずは日本株を柱とし、その他様々な資産の円建て価格変動と日本株との相関関係を特徴的な相場局面別に見たものが表1。基本的には相関係数の低いものが分散投資の対象となる。
直近20年間を見て興味深いのは、日本株と円建て米株、欧州株の相関が高く分散効果が小さいだけでなく、原油や日米REITの分散効果もさほど高くないことだ。またリーマンショック以前はセオリー通り日本株と日米欧債券は逆相関の関係だったが、リーマンショック以降はかろうじて円債だけが、コロナ後には円債もついに分散効果が発揮できないこととなった。コロナ後はドル円、米債、金、米住宅の相関係数がマイナス、分散効果があるように見えるが、ドル円と米債の相関係数を別途計算すると0.53と高く、これらは為替(ドル円)の動きに依存していたことが分かる。つまり資産クラスそのものの分散効果はあまり期待できない。仮に日本株の分散対象をこの中から選ぶなら、為替(ドル円)オープンでの投資対象として米債と金、相関係数の低さの安定感から円債と日本住宅といったところか。
こでこれら5資産を対象にリーマンショック以降のシャープレシオ(=平均収益÷変動率)を最大化する分散比率(日本株5.5%、米債7.7%、金5.6%、円債63.2%、日本住宅18.0%)で構築したポートフォリオのパフォーマンスを見てみる。図1はこのポートと日経平均および円建て米株の収益推移。分散によりシャープレシオは高められたものの収益的には魅力的とは言えず、再考の必要がありそうだ。一方、円建て米株のパフォーマンスは素晴らしく、投資の主軸を米株にした分散投資を考えた方が良いのは明らか。最近の若者が米株を積立て投資の柱にしているのは、投資行動として正しいと言える。
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